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十四話 忌み子の少女

大変遺憾です。

「――ねぇ、寂しくはないの?」


コポコポと気泡が水上に向かい、割れる音がする中。その声ははっきりと聞こえた。水溶液の中で鬼丸は、水溶液の外、目の前に居る少女を睨むように見ていた。


「うわぁ〜怖い顔〜」

「口を慎め、小娘」

「えぇ〜? 何でぇー?」

「わしは鬼族の巫女じゃぞ……」

「あ、そういや」


たはーとやっちまったーと言った表情を浮かべる小娘。そんな小娘に鬼丸には怒りが募っていく。だが、残念なことに今の鬼丸は動く事ができないのだ。


「はぁ〜ぁ〜。ここつまんないねー」

「楽しい訳が無かろうて」


辺りを見回して小娘が言う。鬼丸ですら見た事が無いようなゴテゴテした室内で、水溶液の中には何本もの線が鬼丸に繋がれて居る。


「ん〜……ん? …………あれ? なんで声が聞けるんだろ、そういえば……」

「わしは知らんのじゃ」


と今更な疑問を口にする小娘に、鬼丸は素っ気なく応える。水溶液の中に居るはずの鬼丸の声が聞こえるのは、きっと未知の技術なのだろう。そもそも、ここに鬼丸を封印したのは日本人と言う人間共だった。封印されてからは、ずっと眠りについていたが……確か封印されて三百年後に目が覚めたのだ。


「……うぬは怖くは無いのかの?」

「怖い? 何が?」

「うぬはいずれ死ぬのじゃぞ?」

「……」


その鬼丸の言葉に小娘は何も答えない。この少女は、鬼族でたまに生まれて来る『忌み子』だ。巫女候補とも呼ばれている。


「うぬはゆっくりと死んでくのじゃ。この薄暗い場所でじゃ」


少女は俯き、鬼丸は仕返しができたと言わんばかりにドヤ顔をする。だが少女は顔を上げ、微笑みと共に、


「怖くは無いよ」


そう言った――。




 ――数日後――




「はわぁ〜あ」


ムクリと起き上がる少女。鬼丸は少女を見て目を細めた。


「……どうじゃ、ここでの生活は」

「うん、楽しくは無いけど、まぁ悪くは無いかな!」


そう言って居る少女の顔色はかなり悪い。それもそうだろう、数日間何も食わず飲まずなのだから。

数ある鬼族の里の中で、この里だけ異質な儀式があるのだ。それが『巫女への生贄』と言われる儀式だ。『忌み子』である、巫女候補を巫女が眠る場所に閉じ込め、衰弱死させる事が儀式の内容だった。確かに鬼丸に巫女候補の力が受け継がれるが、その何が凄いのか。なぜ、こんな事を続けるのか。


「同情するのじゃ、小娘」

「同情なんていらないよ……」

「なら哀れみでも向けてやるかの」

「……ふふ、巫女様は酷いなぁ〜」


この数日間で、二人の仲はかなり近づいていた。結果的に死ぬと分かっていても、この少女は笑みを崩さず、希望に満ちた目をして居るのだ。鬼丸ですら、感心するほどに。


「……そう言えば、ここに来てから名前呼んでもらってないし、呼んで無いなぁ〜」

「馬鹿を言うな。うぬのような矮小なる小娘を、わしが名で呼ぶ必要がどこにあるのじゃ」

「えぇ〜……でも、私は巫女様の名前知ってるよー?」

「……それが何だと言うんじゃ」


強情な鬼丸に、少女は頬を膨らませ、プンスカと少々怒って居る。鬼丸は面倒臭いとばかり顔を顰め、大きくため息を吐く。


「つまりねー私は巫女様の事を、鬼丸様って呼んで良いかな〜って」

「……それも偽名じゃ。わしの真名はそれでは無い」

「え〜! 仲良くなりたいのにな〜!」


少女は次にはジタバタと腕を振り、まるで玩具を買ってもらえない子供のように騒ぎ出す。数日間飲まず食わずだったのに、よくもまぁここまで動けるな、と鬼丸は改めて思う。


「……じゃが、良いだろう。小娘、名は?」

「えっ! 呼んでくれるのっ!?」

「あぁ、死に行くうぬの名くらいは呼んでやろう」


今までは出来なかったからな、と少女に聞こえないように、鬼丸は水溶液内で呟いた。少女にはその呟きは聞き取れなかった。というか、鬼丸に名を呼んでもらえると言う、嬉しさからはしゃいでいたのだ。


「私の名前はね! 月詠って言うんだぁ!」

「月詠……。良いだろう、うぬはその名で呼んでやろう。光栄に思え」

「うん! すっごく嬉しい‼︎」


少女は――月詠は屈託ない笑顔を鬼丸に向けて、嬉しそうにそう言うのだった。

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

なぜか投稿できていませんでした。誠に遺憾ですね。まぁちゃんと投稿できたか、確認しなかったにしろ、大変遺憾です!

これは昨日の分になります。

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