十二話 仕える者
過去一遅れました……。
――数瞬間後――
「んぁ〜!!」
縁側に寝っ転がり、大きく唸り声を上げる葛葉。大の字に仰向けで寝っ転がり、荒い息を吐く。それを――今となっては専ら自分の武器として定着している――盾を持ちながら眺める五十鈴。その隣には膝に手をつき、葛葉同様荒い息を吐いている律が居る。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「お疲れ様です」
「……う、うーん」
五十鈴が労いの言葉を掛けるも、律は息を吸い込もうと必死で、葛葉は額に腕を置きながら素っ気なく応える。それ程までに疲れている事が分かる。
「ひ、久しぶりだけど……結構疲れた」
「で、ですね……結構訛っているかもですね」
だいぶ落ち着いてきた頃、二人が顔を上げて久しぶりの激しい運動の――物理的にも物凄く激しい運動の――話をし出した。二人とも汗が伝っており、かなり疲弊している表情だった。……葛葉の方を一瞥し、邪な考えがよぎるが、直ぐに理性で払拭し用意しておいた、フカフカのタオルを手に持ち二人へ届けた。
「あ〜ありがと〜」
「ありがとうございます!」
二人がタオルで顔を拭き、ニッコリと微笑んでくる。やはり眼福。葛葉の微笑みは世界をも救えると、五十鈴は内心ガッツポーズしながら叫んでいた。
と同時にズキっと胸が痛くなる。二人が仲良くしているのを見ているだけで、物凄く痛くなるのだ。心不全だろうか? 明日医者に診てもらうか……。などと五十鈴が考えて居ると、葛葉が五十鈴の顔を覗いてきた。
(か、顔が近いぃ……‼︎)
「五十鈴?」
普段の表情でも眼福だと言うのに、激しい運動後の上気した葛葉のご尊顔に、五十鈴の目が眩しくて失明してしまう。
「五十鈴さん? どうかしたんですか?」
「あ、い、いえ……」
「どったの?」
心配して来る二人に、五十鈴は平静を装って言葉を返す。二人は顔を見合わせ首を傾げる。が、五十鈴が咳払いと共に「本当に何でもありません」と一言。二人は終始疑問符の表情だったが、まぁいいかと諦めた。
「それで、この後三人でお風呂入ろうって」
「……あ、はい。構いません」
「よし、じゃ汗流しに行くか〜」
と葛葉が言い、先に行ってしまう。五十鈴は直ぐに葛葉の後を追い、律も「待ってくださぁい!」と叫びながら二人の背中を追うのだった――。
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