十一話 始まる
遅くなりました!
「……ここ」
「……そうか、やっぱりそこに居るのか」
あれから暫くして、二人はオリアの街近郊の地図を広げながら話し合っていた。エマが指を置いたところは、鬼巣山から少し離れた森林だった。
「……ずっと、確認、してる」
「動きはどう?」
「……少ない。でも、魔物の、量が多い」
目を瞑りながらエマは緋月の問い掛けに答えていく。
エマの得意魔法は――千里眼。文字通り千里をも見通すことが出来る目を、魔法で構築し、自分の視界と共有させる能力だ。通常の効果範囲は、術者の半径三十メートルちょっとのレア魔法だ。扱える物は少なく、使えたとしても運が悪ければ失明する可能性が大なので、誰も使おうとはしないのだ。
だが、エマは違う。失明の可能性は無で、効果範囲は世界中というトンデモ性能な魔法に仕上がっている。(細かな操作で家の中や風呂の中も覗けるようになれたりする)
だがそれを求め、紳士達が一生懸命頑張ったとしても、エマのようにはならないのだ。
「早めに手を打ちたいんだけどね……」
「……これを、今すぐ倒すのは……無理」
「そうなの? いやぁ〜どうしようかなぁ」
街一つが壊滅しそうな状況なのに、緋月の取れる行動があまりにも少ない。
魔物相手なら緋月単独で行ってもいい……が、その場に鬼丸が居るとなると、一朝一夕に片付くとは限らないのだ。下手したら逆に緋月がやられるかも知れないのだ。
オリアの街に強い冒険者は最高でLv.3のみ。五百年前に記された書記には、鬼族の巫女――鬼丸のレベルは12と書てあったはずだ。オリアの街最高レベルの四倍……。これだけで頭が痛くなってくる。
「やっぱりさっき言った感じで手を打つだけか……」
本当なら、国の総力を上げて鬼丸の討伐をしたかったが、邪竜が復活している現状、どうしようもない。
やはり、何かが起こる。あの子が何かを起こす。世界がまた再び動き出し、波瀾万丈な五年前のような世界に戻るのかもしれない。プロローグの終わりが見えてきているのだ、序章の幕が開け始めたのだ。
「……楽しみだ!」
小さく、緋月は微笑みながら呟いた――。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
今日は土曜なのに忙しかったので、この時間となってしまいました!
面白いと思って頂けたら、ブックマークと評価をお願いします‼︎