十話 少女と少女
新しいロリっ娘……。
会議が終わり、各々が自由に過ごしていると……。ザワザワと廊下の奥が騒がしくなる。それは会議が終わり、緋月が帰ろうと廊下に出た時だった。ギルド本部に在籍する職員達が、道を開けて奥からやって来る小柄な少女を見て、驚愕していた。ギルド長でありながら、ギルド本部で引き篭もるギルド長。広大な魔力操作範囲を持ち、世界中をある意味で監視しているギルド長――エマ・アストレア。魔法の効果範囲と魔力量は、全ギルド長の中でも一番だ。
「……あの引き篭もりが外に出るなんてね〜」
ゆっくりとこちらに歩み寄って来るエマを見ながら、緋月は物珍しい物を見る目でニヤニヤしながら呟く。
身長は緋月より若干小さいくらいで、緋月よりも子供っぽさがある。ジトーっとした目はちゃんと見えてるのか、と思うほどで、だらーんと腕は力が抜けている。今にも転びそうで、周りの職員達がハラハラしながら見守っている。
「――っ!」
と緋月との距離が二メートルほどになって、エマは緋月が居ることに気付いた。ジト目で死んだ魚のような目に、一気に光が宿り、脱力していた腕にも力が漲る。
「エマ〜ちゃんと前見ようねー」
駆け寄ってき、緋月にぎゅっと抱き着く。頬を染め、絶望したような表情にジト目の死んだ目から、希望に満ち溢れたようなにんまり笑顔に猫口と、先ほどまでの雰囲気はどこへやら。可愛らしい少女が少女に抱き着くと言う、大変微笑ましい光景が出来たのだ。
「緋月〜……!」
「あーはいはい」
顔を擦りつけて、極小な声でエマが名前を呼ぶ。緋月はそれに応えるように、空笑いしながら頭を優しく撫でてやる。すると笑顔から蕩け顔へと表情が変わっていく。
「……お、おい……何だあれ」
「天国だな」
通り過ぎる職員達がヒソヒソと会話しながら通り過ぎて行く、緋月は若干の気恥ずかしさを感じながらも頭を撫で続ける。すると、
「あははははー…………うぇ?」
気恥ずかしさを誤魔化そうと、空笑いを続けていた緋月の手首に、ひんやりとゴテゴテした金属のような物がかけられた。
緋月は自分の手首を見ると、ドラマとかで見たことがある手錠がかけられていた。
「……え、何これ?」
「……」
パチパチと目を瞬かせ、緋月が手錠をかけてきたエマに問い掛けるが、エマは一言も発さない。だが、パチンと指を鳴らした。すると、目の前が真っ暗になり、何も見えない状態となってしまった。
(あれ、これって……不味い感じ?)
真っ暗闇な中、緋月は自分に起こりそうな事を想像した。……うん、やはり不味い感じだ。
「え、エマ? これ何なのかな〜? ぼ、ボクは怖いの苦手なのし、ししし知ってるよねー?」
返事は返ってこず、緋月が恐怖で小刻みに震え始めた頃、カチンと音がしたと共に目の前の暗闇が消えた。どうやらここは部屋のようだった。円柱のような形状の部屋だ。壁は滑らかになっており、床にはぬいぐるみや色鉛筆、絵が描かれた紙が転がっている
「……え、エマ?」
目の前にいる暗い表情をした少女に声を掛ける。正直言って逃げたい。早く一刻も早くこの場から去りたいと思い、緋月は手錠を壊そうとするが壊れない。
「……緋月。何で、この前は……会ってくれ……なかったの?」
「……え?」
暗い表情から悲しそうな表情へ変わり、エマがゆっくりと近づいて来る。
「こ、この前って……?」
「会議の後……会ってくれなかった」
「…………ぁ」
瞬間、緋月は全てを察した。エマ・アストレア――齢僅か九にして、その魔力量と魔力操作能力、魔力効果範囲を買われてギルド長に推薦された史上最年少の奇跡の逸材。だが結局はまだまだ小さな子供だった。仕事も出来るわけがない、戦う事だって出来ない、魔法だって扱えるのは少なく一つのことしか出来ない。
ないない尽くしの少女は心を病んでしまったのだ。そんな時、手を差し伸べたのが緋月であった。優しく、自分と変わらない背丈から、エマは既視感を覚え、好意を寄せる様になってしまったのだ。
「……全く、君は本当に九つなのかい? ……ごめんね、あの時は忙しかっんだ、許しておくれ」
「……ん!」
「…………ふっ、やっぱり九つか」
ハグを要求して来るエマに苦笑しつつ、緋月はエマとハグをするのだった――。
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ロリっ娘は一応一人だけなんですがね……。緋月は見た目は子供、頭脳は大人っ娘で、鬼丸はロリババアなんですよね……。
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