九話 大切な方の作戦会議‼︎
モロ言っちゃってますね……。
――王都円卓会議場――
「……どう言う事ですか」
「報告通りだよ」
美丈夫――エルリアが緋月の報告を聞き、目頭を押さえて低く唸る。どうやら周りのギルド長達もそのようであった。皆報告書の紙を見ながら、深く考え込んでいる。
「にしても、何故こんなにもオリアの街では異変が起きるのですか……!」
「ボクが聞きたいさ。……まぁでも、何かが動き始めてるんじゃない?」
「そんな『英雄伝説』じゃありませんし……」
力無く訴えるエルリアに緋月は適当に返す。だが後半は本当だ。英雄の娘が、この世界に降り立ってきた時点で、歯車は動き出したのだ。前英雄が果たせなかった事を、更なる偉業を成し得るために、あの娘がやってきたのだ。と緋月はそう解釈している。
「オリアの街近郊に『タイラント』か」
「初心者冒険者の死亡率の上昇も頷けますね……」
「今のままだと不味いでありんすえ?」
「事態はかなり深刻なのでは?」
「早急に対策を取らなければ……」
ギルド長達が次々と意見を述べ出し、今後のオリアの街の異変に対して、どのような措置を取るべきかが、今日のこの会議で決まる。この異変の原因であるであろう『鬼丸』に関しては、……正直どうしようもない。国家一つを潰せる力を持った怪物なのだ、ギルドという組織のみではどうすることもできないのだ。
「緋月は今後の方針はどうするので?」
「方針ってもね〜、魔物を駆逐するわけには行かないしな〜。……はーどうしたもんかなー」
冒険者組合が頭を抱える問題なのに、緋月が何か対策を思いついてる訳無く。このまま放置しても良いかなーと面倒くさいしーと緋月の頭の中で悪魔が囁いている。
「……とりあえずは高レベル冒険者だけ、難易度の高いクエストをしてもらって。低レベル冒険者には難易度低めの、街から近い所のクエストを受けてもらうかな」
「確かに、これ以上の死者は不味いでありんすからね〜」
キセルを離してふぅーと煙を吐き、緋月の言葉に肯定の意を示す紗和。他のギルド長達も、緋月の意見に納得のようで、反論は無い。
「……まぁそれでいいでしょう。調査や強力な魔物が出た際は、どうするので?」
「そこはボクが直々に倒しに行くさ」
当たり前だがと言った表情を浮かべながら、緋月はエルリアに言い返す。対策としてはまぁまぁだろう。今のギルドに他の国や街に職員、冒険者を派遣する余裕はこれっぽっちもないのだ。
「はぁ、邪竜騒ぎが無ければ、どうとでも対応出来るんですがね……」
エルリアがズレたメガネを掛け直しながらそう愚痴を溢した。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
葛葉が英雄の娘なこともう明かしちゃってますね……。こういうのって終盤でわかることのはずなのに……。
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