七話 イチャイチャ
今日は早めで!
ガヤガヤと、いつもの通り騒がしいギルドのレストランに、葛葉と五十鈴はやってきた。まだ七時半過ぎなので、冒険者達が多い。クエストに行く殆どの冒険者達は、大抵八時くらいからクエストに行くらしく、七時だと大量の冒険者が此処にいるのだ。
「すいませーん!」
「はーい!」
防具のガシャガシャ音や、冒険者達の話し声で騒がしい中、葛葉はウェイトレスを呼ぶ。どうやらギリ聞こえたらしく、ウェイトレスが人の合間を縫って進んで来る。それからやってきたウェイトレスに、二人は既に決まっている注文を伝えて、料理を待つのだった。
「そういえば……ここ最近クエストしてないねー」
「はい、そうですね」
周りの冒険者を見回して、葛葉があははーと笑いながら呟き、五十鈴は相槌を打つ。そして・・・と数秒間を開けて、葛葉は自身の財布をガバッ! と開いた。
「…………」
「葛葉様?」
「五十鈴……お金持ってる?」
「はい。最近はよく葛葉様にお金を払ってもらっていますので、かなり有りますが」
「……ごめん、今日の分払ってくれる……?」
五十鈴は数秒考え、チラッと葛葉の財布の中身を見てみると、財布の中はすっからかんであり、文字通りの一文なしな状態だった。
「……っ! すみません、葛葉様! 私が葛葉様のお言葉に甘えてしまって居たばかりに……!」
「え? そ、それは関係ないよ……?」
ここ最近、葛葉は律と五十鈴の食事代をずっと払っていた。無論、自身の食事代もだ。
前の護衛の依頼で少し多めにもらって、余裕はかなりあった。のだが、律は知っての通り大食い。葛葉の金なぞ秒で溶けてしまうのだ。そこに更に自分と五十鈴の二人分のも合わさり、葛葉の財布のライフはとっくのとうに0となっていた。
「葛葉様のためなら! いくらでも!」
「ちょ、ちょちょちょ! 何金貨出してんの!?」
五十鈴が取り出した金貨――日本で言うところの万札だ。この世界には硬貨と紙幣の二つがあり、緑色の紙幣が十万円札で、赤紫がかった紙幣が五十万円札で、金色の紙幣が百万円札となる。硬貨は一円から一万円までちゃんとある。
「……ですよね。甘えてきたこの口を、切り裂かなくては」
「ちょっとぉ⁉︎」
五十鈴はハタと気付き、財布を虚空庫にしまい一安心していた葛葉は、虚空庫からダガーを取り出した五十鈴の腕を掴み掛かり、取り押さえた。
「葛葉様! は、離してください! 私はこの卑しい口を切り裂かなければ行けないんです‼︎」
「せんでいいからぁ‼︎」
と二人が朝っぱらからイチャコラしていると、コツコツと足音が聞こえてき、葛葉と五十鈴のテーブル席の前で止まった。
「葛葉さんに五十鈴さん! 今日から律は復帰いたします――あぇ……え? ど、どう言う状況ですか……これ?」
「……あ、律」
律が、葛葉が五十鈴の腕を後ろに回して机に押さえつけてる光景を見て、一言。そんな律だが、律もキャピーンとプリキュアみたいなポーズをとって復活宣言をしていた。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
葛葉と五十鈴はいいコンビですね!
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