六話 日常
五十鈴はお母さん属性で!
――数日後――
此処の所ずっと晴れ渡る青空から太陽の光が部屋へと差し込み、瞼をホカホカと焼かれる。鳥の囀りが聞こえてきて、葛葉は欠伸をしながら起き上がるのだった。
「葛葉様。おはようございます」
「……んー」
葛葉の一日はちょっと早い。起床は毎回七時で寝惚けから始まり、五十鈴に朝は面倒を見て貰らえる。寝起きの葛葉はいつもは澄まし顔なのに、眠たそうな可愛い表情になっている。今となっては五十鈴の毎朝の楽しみだ。
「葛葉様、着替えますよー?」
「……んぅ〜」
五十鈴が、葛葉の寝惚け顔をたんまり堪能し終わり、クローゼットを開けてハンガーという物で掛けられた、葛葉のいつもの戦闘服を取り出して、着替えが始まる。ホワホワと上の空の葛葉をベッドから降ろし立たせて、葛葉の着ている大きいジャージの線ファスナーを外す。この街に、葛葉に仕えるようになってから、五十鈴は日本人の暮らす異世界の道具が自然と扱えるようになったのだ。
「葛葉様、腕上げてください」
「んー」
頭から戦闘服を着させ、葛葉の長く美麗な髪を戦闘服の襟から出させ、戦闘服の皺を伸ばす。
「葛葉様、足上げてください」
「んー」
後はスカートを穿かせるだけだ。いつもやっている事なので、最早流れ作業だ。パパッと終わらせ、五十鈴は葛葉を椅子に座らした。
「葛葉様、コーヒーお飲みになりますか?」
「んー……ぅん」
葛葉は毎朝コーヒーを飲むので、確認する意味も無いが確認は重要なので、毎回一応確認をしている。
今日も五十鈴は――予め用意しておいたマグカップにドリッパーを重ね合わせ、ペーパーフィルターをドリッパーに入れ、コーヒー豆をペーパーに入れて――マグカップにコーヒーを淹れる。慣れた手つきで五十鈴はコーヒーを淹れ終わり、葛葉の前に置いた。まだホワホワとしている葛葉は、カップを手に取りコーヒーを啜り、やっとこさ覚醒する。
「……んー、美味しい」
「ありがとうございます……!」
何度言われても嬉しい葛葉からの言葉。何度見ても飽きない葛葉の微笑み。五十鈴は至福を噛み締めながら、片付けを始めるのだった。
――それから数十分後。
「ねー五十鈴ー?」
「どうかしましたか?」
ベッドに寝転がり、本を読んでいた葛葉が五十鈴に声を掛けた。と同時にぐうぅぅと言う腹の虫の鳴き声が聞こえてきた。
「……お腹空いたし、何か食べない……?」
「はい、そうですね」
二人はクスクスと笑い合うのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
コーヒーのところ詳しく書きすぎましたかね?
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