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五話 異変

昨日(今日)の反省として今日は早めです!

緋月は単純で、戦では負け知らずであり、彼女が赴く戦場には決まって彼女以外の死体が転がっているのだ。その事から【戦帝】と言う二つ名が付けられたのだ。


「懐かしい名前だね〜」


緋月と葉加瀬が懐かしんでいると、魔物の咆哮が森林の奥深くから轟いてきた。その場にいた全員が手にしている武器を構え、辺りを警戒し始める。その場の全員に緊張が走り、時間の流れが遅くなっているのかのように感じる。

だが、それは一瞬にして現れた。


「――っ⁉︎ どわぁあああああ‼︎」


冒険者の一人が叫び声を上げながら、放物線を描きそのまま地面に落下したのと同時に、木々の間から現れた魔物、地上最強のトカゲ『タイラント』


「なっ! 全員引け!」


タイラントの姿を確認したと同時に、男性冒険者のアレンがパーティーメンバーにそう叫んだ。タイラントの推定平均レベルは5。このオリアの街近郊に住んでいて良い魔物ではないのだ。


「――っ⁉︎ レックス⁉︎ お前何してんだ!?」


ギルド職員も冒険者もタイラントから離れる中、一人単身で突っ込む人影があった。Lv.3冒険者レックス・ウィリアムなる男だ。大戦斧を肩に担ぎながら地面を駆け、タイラントへ突貫する無謀な背中に、アレンは声を荒げ怒声を掛ける。


「るっせぇ‼︎ 俺の戦い方に文句つけんじゃねぇ‼︎」


アレンの声を無視し、更に走る速度を上げるレックスに、アレンとそのパーティーメンバーがため息を吐く。


「申し訳ございません……。ご主人様の勝手をお許し下さい」


そんなアレンパーティーに近寄り謝罪をする一人の少女。ヒョコヒョコと猫耳と尻尾を動かし、眠たそうな目の無表情な少女。この少女は元奴隷だ。レックスがある日クエストを受け、そのクエストに向かっている道中に奴隷商の馬車が魔物に襲われていたのだ。奴隷商の商人は皆既に死んでおり、奴隷商が雇った傭兵も蹂躙されていたのだ。そんな中一人生き残ったのがこの子だったのだ。


「リアッ! 援護しろ!」

「はい、分かりました」


テクテクと、レックスからかなり離れた真後ろまで行き立ち止まり、少女は両手を突き出し詠唱する。呪文の歌が紡がれた直後、レックスが進む方向の地面が隆起し、断崖絶壁を作り上げた。日本人から、異世界の恐竜と呼ばれている『タイラント』の背丈を優に越える、地面の隆起。それを僅か齢十一の少女が成したのだ。


「……っ」

「り、リアちゃん……! 大丈夫かい?」

「は、はい……」


クラっと地面に倒れそうになるリアの体を、駆け寄ったアレンがキャッチして地面との衝突を阻止。眉間に皺を寄せて、発汗するリアにアレンは声を掛ける。齢十一の少女には、この大規模な魔法はかなり堪えるだろう。常人離れな集中力に魔力操作、そして魔力量。リアの構築した魔法陣を目に、葉加瀬は感嘆の息を漏らした。


「……凄い」

「へぇ〜葉加瀬から称賛貰らえるなんて、あの子は凄いねー」


二人は冒険者の戦いを――いつでも参戦出来るように――眺めながら呟く。とそんなこんなしていると、断崖絶壁から大戦斧を構え飛び降りるレックス。軌道はズレる事なく、タイラントの銅を断たんとする。……が、タイラントのレベルは5。


「――……チッ‼︎」


勿論Lv.3の攻撃など通るわけもなく、その固い鱗に弾かれ大戦斧の刃が刃こぼれしてしまうほどだ。レックスは地面に着地すると同時に直ぐに飛び退く。だがタイラントはその飛び退いている隙を突いた。尻尾を鞭のように操り、地面を破砕させ砂埃を撒く。視界が著しく悪くなり、レックスは着地して辺りを見回す。リアやアレンの姿はなく、他の冒険者やギルド職員の姿も見えない。


「……不味った。ここで俺が死んだら、リアの世話どうすっか」


レックスが呟いた次の瞬間、レックスの斜め上の砂埃が晴れ、巨大な足がレックスを潰そうと迫ってきていた。……どうしようもない。ただ死を覚悟するのみ。冒険者なら、いつかは来る日なのだから、あとは目を瞑って待つだけ。だが待てども待てども死は訪れず、代わりに何かネバネバした液体を頭から被る感覚がやって来た。


「……なッ――」


目を開けると、レックスの目の前には刀を振り払った緋月がおり、そしてその横にはタイラントの巨大な足が転がっていた。


「流石にそれはね〜」


刀を肩に当てながら、緋月はタイラントを睨め付けながら呟いた。次の瞬間、タイラントの巨体の上に大きな魔法陣が展開され人並みの大きさの鋭い氷柱が、タイラントに向かって380m/sの速度で飛んで行く。氷柱の数は五十以上、タイラントの背中は針山のようになり血をダラダラと地面へと滝のように流す。


「……死亡率の上昇の原因を調査しにきたのに、その調査で死人を出しては本末転倒すぎるからね」


平気な顔をして――人智を超えた凄まじい偉業を成した葉加瀬は、苦笑しながら独り言を呟いている。きっと彼女等にとっては、このような事は些細なのだろう。国王が指揮権を握る、王国近衛魔術兵士団でもたった今、葉加瀬のしたような魔法の行使は出来ない。たった一人で、国家転覆すら可能だろう。それがLv.8なのだ。


「……一瞬で」

「Lv.5が……」


地面に倒れ伏す、タイラントの巨体。完全に息を引き取っており、やったか? と言う死亡フラグを立てても絶対に起き上がらないと確信できる。


「……調査を続行するよ〜!」


ハプニングを処理し、緋月は呆然と佇む冒険者、ギルド職員達にパンパンと手を鳴らしながら声を掛けるのだった――。




「――ふむ、大体は理解できたのじゃ。あの二人は真っ先に潰そうかの〜? 奴との戦いに水を刺されそうじゃし」


緋月と葉加瀬の戦いを観察していた影――鬼丸は口角を上げ、着々と準備を進めるのだった。

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

反省を込めて早めの投稿と、多分多めの話です!

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