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二話 パーティー

遅くなりました。

三日ぶりに身体を動かすが怠さは無く、いつもと変わりなかった。それに――、


「――葛っちゃ〜ん‼︎」


と葛葉の悩みを嘲笑うかのように、悩みの種であった緋月が飛び着いてきたのだ。そして顔を葛葉の胸に埋めて「うぇへへ」と笑う。


「……」

「葛葉ちゃん。緋月の事で悩んでも意味ないよ……?」

「……そう言うことは早めに教えてください」


緋月のアホ毛を掴み地面に下ろして葛葉は、葉加瀬の遅すぎる助言にツッコミを入れる。

本当に悩んでいた自分が馬鹿みたいに思えてくる。当の緋月はほけぇ〜っとして居るし。


「あれ? なんかボク、ディスられてる?」

「そんな事ないさ」「そんな事ないですよー」


呆けていた緋月が、うん? と眉を寄せて怪訝な表情をして二人の会話の内容に、疑問を持ち疑問の声を上げるが、二人は棒読みで否定する。緋月は不満顔のままだが、まぁ良いか……良いのか? と首を傾げる。とそんな話をして居ると車輪の音と葛葉のことを呼ぶ声が聞こえて来た。葛葉は声の方向に振り返り、うーわとつい声を出してしまった。


「……本当にあるんだ」

「だから言ったでしょ? 異世界に夢もっちゃ駄目だって」

「緋月さんと葉加瀬さんがこうしたんじゃ?」


ガラガラと木製でできた車輪と、頑丈そうな物質で作られて居る骨組み。一見すれば前世の車椅子と一緒だ。そして車椅子に乗って居るのは大怪我をした律で、その車椅子を押して居るのは無傷な五十鈴だ。


「葛葉さーん!」

「身体の調子はどう?」

「痛みはまだありますけど、平気です!」


ふすんと胸を張る律。だがその顔は少し歪んでいて、痩せ我慢して居るのが窺える。


「なら良いけど、辛かったらいつでも言ってね?」

「……あはは、やっぱりバレちゃいますか」

「そんな我慢する事もないでしょ?」

「……いえ、これは私の至らなさが招いた事です。それに葛葉さんや五十鈴さんを巻き込むのは……」


左手で頬をポリポリと掻きながら乾笑いしていたかと思えば、俯き暗い表情になりネガティブなことを言い始める。律はこう言うところがあるのが、少し問題だ。……だがまぁ、可愛いから良いのだ。


「……律」

「は、はい……!」


暗い表情のまま律は顔を上げる。葛葉はゆっくりと律に近づき、目線を律と同じ高さにしてそのまま、


「律。私達は一蓮托生のパーティーでしょ?」


葛葉は自身の額と律の額をくっ付けて、ガチ恋距離で真っ直ぐに律の目を見る。律は頬を紅潮させて、口をあわあわと痙攣させる。


「……葛葉ちゃんも中々」

「りっちゃんだけずる〜い!」


後ろでは外野の二人――葉加瀬と緋月が変なこと言っているが、葛葉はツッコミたい欲を抑え、律に語り続ける。


「どんな事があろうと、私達は一緒だよ? だから私達に迷惑掛けていいんだよ」

「……そ、そんな事は……」


モゴモゴと葛葉から目線を逸らし、何事かを呟き始める律。自分に自信がないと言うより、何か違う事に悩んでいるから律はこうなのかもしれない。その何かは分からないが、今の葛葉に出来ることは励ます事だけ。


「律、見て」


葛葉が顔を向ける方に、律も顔を向ける。そこには五十鈴が立って居るだけだ。急に顔を向けられた五十鈴が首を傾げて居ると、


「私も五十鈴も嫌な顔してる?」


葛葉は再び律に顔を向け微笑む。五十鈴も嫌な顔はしておらず、二人のやり取りに微笑んでいる。


「パーティーメンバーなんだから、迷惑掛ける前提で居ないと!」

「…………はい! お二人に迷惑を掛けます! そして、いつかお二人に迷惑が掛からないように、日々精進しますっ!」

「うん、私達は迷惑ドンと来いだよ!」


胸を張り拳で叩く葛葉。そんな葛葉は吹き出し、律も釣られて笑う。そんな光景を三人は眺めるのだった。

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

パーティーとしての絆が深まりました!

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