一話 進める歩
新章突入!
緋月との一件から数時間後。律が目を覚まし、葛葉が律の身体の調子を確かめ、無事そうだったので安堵していた頃。葛葉は葉加瀬から声を掛けられていたのだ。
「えっ⁉︎ 三日もですか!?」
葉加瀬から告げられたのは、葛葉があの場から運ばれてこの病床に移され、既に三日も経って居る事だった。
てか私寝過ぎじゃないっ⁉︎
「何でそんなに…」
「……これは推測だけど、君は一度だけ即死並の攻撃を喰らったそうだね?」
「あー……確かに喰らいました」
男性冒険者を助けた時のあの攻撃だ。他にも多く重傷を負っていたので全く印象に残っていない。というか何故あの場で死ななかったのか、幸運すぎる気がする。
「その回復にスキルを使い、かなり消耗したのだろう」
「なるほど……確かにそれなら納得が行きますね」
まだこの世界では、スキルの仕組みが何一つ分かっていないのだ。魔法の仕組みはかなり解明されて居るのだが、スキルのことは何も分かって居ないのだ。雄一囁かれて居る説は、神からの贈り物という説なだけ。科学的根拠が少な過ぎて、迷信とよく言われるらしいが。
「……君の戦場は必ず死地に変わるね」
「あ、あはは〜……そういうスキルでもあるのでしょうか……?」
それが本当だとしたら、神様に助走つけてグーパンをぶち込みたい。それから葛葉と葉加瀬は他愛無い話をある程度して、太陽の位置が少し変わった頃。
「さて、体調の方はどうかな?」
と言って来た。
葛葉は肩をぐるぐると回し、脚を左右に動かし、腰に手を当てて捻り、首をぐるぐると回して、最後に手足を伸ばす。
「はい、問題無いです!」
痛いところも怠いところも無く、至って健康な身体だ。死線を潜った筈なのに五体満足とは実についている。律ですら右腕と左脚を折られたりして居るのだから。
「ならもうそろそろ、オリアに戻るとしよう」
「……え、戻るんですか……?」
「ん? どうかしたのかい?」
葉加瀬の言葉に葛葉はビクッと肩を跳ねさせ、ガクブルと身体を小刻みに振るわせ、顔を真っ青にした。葉加瀬は急な葛葉の奇行に疑問符を浮かべるが、あっと直ぐに察しがついた。
「安心したまえ。馬車では戻らないからね」
「ほ、本当ですかっ!?」
「あぁ、緋月の金で転移で帰る事になったんだ」
「……そ、そうですか」
苦笑いをしながら葛葉は相槌を打つ。つい三日前にあんな事があったから少し緋月とは気不味い。今後どう接したら良いのか……。
「葛葉様、準備出来ましたよ」
と緋月とどうするか考えて居ると、せっせと葛葉の荷物を大きなリュックみたいなバックに詰めて、それを軽々と持ち上げる五十鈴。
五十鈴の言葉に葉加瀬が頷き、
「……それじゃあ行こうか」
扉に向かって歩き始めるのだった。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
今日は少し遅れてしまいましたが、無事に投稿できて良かったです!
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