十六話 形勢逆転
強キャラの、決着付けようか、ほどかっこいいものはないですよね!
葛葉は周りを見た。他パーティーは壊滅、律も酷い怪我をしており、五十鈴は無事だが闘士の女性を介抱しており、戦いは出来ないだろう。どうやら、今戦えるのは自分のみのようだ。
(……主人公みたいな事が出来るじゃん!)
危機的状況を打破する。何ともまぁ主人公っぽいのか。今の葛葉は全快しており、ワイバーンは満身創痍。戦えば勝つのは葛葉だ。だが、そうならないのがLv差だ。
「出し惜しみしたら死んじゃいそ〜……」
そうぼやき、気を取り直す。
葛葉は緋色の光を目に宿し、地面を蹴り上げる。ワイバーンは先程と同じ葛葉の攻撃に、叩き払おうと前脚を振るって来たが、そこには葛葉はいなく、不思議に思ってると、手が爆発した。
二回、三回、四回と爆発音が響き、ワイバーンの前脚がボロボになる。硬い鱗でも何度も爆発されれば耐えられないのだ。そして直ぐに脚が斬られたかと思えば、爆発する。地面に膝をつけ、ワイバーンは咆哮を上げた。
「……うわ、うるさ!」
至近距離の咆哮に、葛葉は足を止めて手首で耳を塞ぐ。ワイバーンはギロリと鋭い眼光を向け、己の巨大な脚を地面へ力一杯叩きつけ、地面を凹ませる。土埃が舞い上がり、視界不良の中、葛葉の顔面に迫る鋭い爪。咄嗟にナイフをクロスさせ防御の態勢をとるが、葛葉の身体は宙に浮かび上がり、次にはワイバーンの手で叩かれ、地面に激突する。
「……っ!」
盾がわりにした腕はひしゃげ、骨が突き出しており出血して居る。心臓の弱い人が見たらワンチャン死んでしまいそうなほどだ。
(今更ながらに、私の精神ってやばく無い?)
腕が切り落とされようが、腕が拉げても、発狂も気絶したりもしない。……私は機械だった? 腕捥いで、機械仕掛けの義手付けて、自動手記人形にでもなろうかな。
「はぁ……頭痛くなって来た……」
スキルの連続使用。その代償は誰に関わらずあるもので、その多くが嘔吐、眩暈、頭痛、昏倒等々。葛葉の場合は、無から武器を作るスキル、自身の想像通りに身体を弄れるスキル。この二つであり、両者共に強力なスキルである。故に代償も大きく、尋常ならざる頭痛が葛葉を苛んでいるのだ。
「……早く決着付けようか。なんて、言ってみたかったな」
強キャラが言いそうな事を呟きながら、葛葉はワイバーンに歩いて行く。
――主人公になろうとした。【英雄】になろうとした。かっこよくありたいと、そう切に願っていた――。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
葛葉は果たして強キャラになれるんでしょうか⁉︎
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