十五話 起死回生
これがかっこいいんですよね!
「――くっ!」
渾身の力を振り絞り、男の巨大な身体を突き飛ばした葛葉は、ワイバーンの爪に斬り裂かられる。血が噴き、腕が飛び、身体が力無く地面に転がる。腕ごと脇腹を裂かれ、即死としか言いようのない状態だ。
「……く、葛……葉さん?」
刀を落とし、葛葉の死体をただ眺めることしか出来ない律。他パーティーの者達も武器を落とし、戦意喪失してしまう。仮にもギルド長とLv.4に認めれた葛葉が、いとも容易く殺されたのだ。それは十分に戦意を削った。
「――うぐっ!?」
呆然と律が絶望し立ち止まって居ると、ワイバーンの尻尾が律へと襲いかかり、律は避ける事すら出来ずにモロにくらった。バキボキと腕が折れ、肋骨にヒビが入った事を感じながら、地面に強くぶつけられる。
脚も逆方向に曲がり、身体全体に痛みがあり、立つ事すらままならない。
「……葛葉さん、葛葉、さんっ!」
律は地面を這い、葛葉の下へ向かおうとするが、身体が悲鳴をあげ顔を苦悶に歪める。だが、行かなくてはならないのだ。
葛葉にしか、この状況を打開することはできない。
「葛葉……さん」
息も絶え絶えに、手に握る回復薬のポーションを見やる。エリクサーではなくても、少しはマシだろう。葛葉にしか出来ないのだ。 弱くて、ちっぽけな自分は、彼女の力が無くては生きていけないから。
「助けて……」
縋るように、無意味と理性が訴えるが、本能は否定する。彼女はまた立ち上がり、あの強大な敵に立ち向かう。それが律の知っている、鬼代葛葉という人物なのだ。
そして律の声に呼応するように、葛葉の身体が淡く光り始めた。
「――葛葉さん……!」
それに気付いた律は安堵の表情を浮かべた。
「……――っ!」
見る見るうちに、葛葉の身体は無傷の状態へと戻っていき息を吹き返す。ゆっくりと立ち上がり飛ばされた腕の下へ歩き、手に握られていたナイフを取る。
(……危なかったぁ〜……あのままだったら本当に死んでたっ‼︎)
鼓動が早くなる心臓を、胸の上から抑え、葛葉は深呼吸をする。思いの外、葛葉の負った傷が凄まじく『想像』でも、そう簡単には治らなかったのだ。
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主人公が死ぬ系じゃないんでね、英雄ですから! ですがかなり追い込められる確率は高いですよ!
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