十四話 戦闘の転換点
主人公とその周りだけが強いのは、ちと面白く無いですよね。
総勢三十発の火球はワイバーンへと飛んでいく。
「……マジか」
火球はワイバーンの体を焼き尽くし、葛葉達が作った傷口に更に火傷を負わせる。これにはワイバーンもたまらず苦悶の咆哮を上げるが、葛葉達と他のパーティーの冒険者が攻撃の手を緩めるわけなく、更に苛烈を極めて行く。
「お嬢ちゃん! 俺ら二人に合わせてくれっ!」
唖然として居る葛葉に声をかけてきたリーダー格の男。声に振り返ってみれば、剣士の男性と闘士の女性が駆け出し、ワイバーンへ追い討ちを仕掛けんとしていた。間髪入れずに、葛葉はナイフを構え直し、走り出す。
初めてパーティーメンバーとは違う、他のパーティーとの共闘に、戸惑うことなく葛葉は順応していった。目配せもせず、相手のやりたいことを考えて、攻撃を加える。前世で、唯一の居場所だったゲームの成果だ。
「オラァ‼︎」
「はぁああああっ‼︎ スキル『玉砕』――っ‼︎」
剣士の男性が尻尾を切断し、闘士の女性が鱗に手が減り込むほどの力で殴る。葛葉は背中にナイフを突き立てて、自重でゆっくりとワイバーンの背を切り裂いた。この調子なら勝てると、誰もが思った瞬間。
「――っ!!」
ワイバーンが短くなりつつも、強力な尻尾を闘士の女性に鞭のようにしならせ、攻撃する。あの攻撃をモロに喰らえば死ぬ。葛葉が動くよりも早く、闘士の女性の目の前に現れ、盾を構えた五十鈴が尻尾の強力な攻撃を受け止める。が、そのまま二人は吹き飛ばされ、かなり後方の岩に身体がめり込んだ。
「五十鈴っ‼︎」
「よくもやりやがったなぁ‼︎」
葛葉が叫び、男が激昂に駆られワイバーンへと肉迫してしまう。それを少々冷静を欠いていたとしても、葛葉は男に止めるように叫ぼうとしたが。やはりLv差が凄まじく、ワイバーンの方が早い。
(――っ! もう……これ以上はっ‼︎)
戦場に緋色の軌跡が現れる。
ワイバーンの攻撃に、避けることすら叶わない男は、自分の愚かさを呪い、死を覚悟した。だが、誰かに背中を押され、突き飛ばされる。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
察しがつく最後でしたね。
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