十一話 ど定番!
今日は遅くなりました……。
「葛葉さん! 大丈夫ですか⁉︎」
ぼやけていた視界が晴れると、涙目で葛葉の顔を覗き込んでくる律の顔が、そして律の対面に手を握り神に祈っているような五十鈴が居た。そして遠くからは断末魔が。
「――っ! 二人とも、戦える?」
そう言いながら葛葉は律と五十鈴の顔を、交互に見てから遠くで戦って居る冒険者達に目を向けた。
重戦士職がワイバーンの攻撃を防ぎ、魔術師が詠唱を終わらせ魔法攻撃を放ち、剣士がワイバーンの脚に切り傷を与える。パッと見は優勢だが、全員満身創痍で、いつ誰が死ぬかわからない状況だった。
「……当たり前ですっ‼︎」
「私は何処までも、葛葉様に着いていきます!」
思い出した……。アニメの王道の物語や、最強系。どんな物語にでも、【主人公】は一人で戦ってはいない。
ハリウッド映画だって、仲間と共闘して敵を倒している。一人で全て背負っても、結局何も出来ない。だから仲間に頼るのだ。前世の酷く冷たい人間関係では、このことに気付かされる事はなかったろう。でも、この世界は世知辛くても暖かく、律や五十鈴のような仲間が出来た。戦える。いや、戦おう。仲間と――っ‼︎
「……二人共」
『はい!』
律と五十鈴が同時に返事をし、葛葉は装着して居るナイフを鞘から抜きながら、二人に言った。
「着いてきてね――っ‼︎」
直後、ワイバーンの目が潰れた。正確には目が斬られたのだ。その切傷は深く、目は二度と使えないだろう、ワイバーンの硬い皮膚にも裂傷を与えていた。
――スキル発動『英雄奮起』――
ワイバーンが方向を上げる中、殺意に満ちた瞳の葛葉がゆっくりとワイバーンへ向かって歩いてく。
「……葛、葉さん……?」
「変わった……?」
今までの彼女とは、また違った雰囲気。殺意によるものか、憤怒によるものなのか。それへ分からない。
でも、一つ言えることがあるとすれば……。彼女の姿は、少しだけ似ていたのだ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
少年漫画みたいな展開になりましたね。
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