十話 憧れ
今日は早く投稿できました!
「何が……強くなるだ――っ⁉︎」
そう呟いた直後、腕越しに脇腹へと凄まじい衝撃が走り一メートルほど宙を飛び、二メートルほど転がり岩に頭を打つけて、葛葉の身体は傷だらけの状態で止まる。葛葉を襲った攻撃、ワイバーンの鞭のような尾が葛葉を吹っ飛ばしたのだった。
「葛葉さん!」
「葛葉様っ!!」
気を取り直した二人が声を上げ、葛葉の下へ駆け寄って行く。ワイバーンはそんな二人を無視し、残る弱者共を見つめてから、笑ったように口を開き咆哮を上げた。頭から流血し、視界がぼやけ、考えが纏まらない葛葉はワイバーンの咆哮による頭痛に顔を歪める。
(あぁ、まただ。また助けられなかった……。目の前で助けれる命があるのに、また助けられなかった)
思い起こされるのは、あの悲劇の日。
大きな事故に遭い、たった一人動けた自分はあたふたし、ただ時間を無駄にし、母親に庇われ、車の爆発から守られるという、嫌な記憶。自分には何か出来たはずだ。いち早く両親を助ければ、両親は死ななかった。自分の着ていた服かなんかで火を消せば、爆発なんて起きなかった。
なのに、自分は……。
(……なんで私には、力が無いの? ……なんで【英雄】にはなれないの?)
英雄に憧れた。悲劇のヒロインなんて居ない、笑顔じゃない人物も居ない、皆んなが笑えるそんな世界。
後光に照らされ、信頼できる背中を向けるヒーロー。見返りがあれど、強大な怪物から娘を守った英雄。自分はそんな英雄に憧れた。
力が欲しい……。私は【英雄】になりたい。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
英雄に憧れても良いじゃないか、男の子なんだから。
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