八話 強襲
今日は比較的早く登校できてよかったです!
それから暫くして、乗り物酔いが落ち着いてきた頃、葛葉は深くため息を吐きながら椅子に座った。
「葛葉さん、大丈夫ですか?」
「少しね〜、それよりもういいの?」
「はいっ! いつか乗ってみたいですね!」
「そんなに乗りたいんだ」
キラキラと目を輝かせ、祈るように両手を握り締め、わぁー! と子供のような笑顔で言うのだった。異世界なら地竜とかの方が良いんじゃ……。と思い言おうとしたが、葛葉は辞めといた。そこで、ふと葛葉は不思議に思い、隣に座っている律に向き直る。
「……ねぇ律ー」
「はい、どうしました?」
「護衛ってもさ、雇う必要あるのこれ?」
「……た、確かに平和ですねー。まぁここら辺は魔獣も強くありませんから……それに盗賊もそうそう襲ってくるモノでもありませんし」
とことん護衛がいるのか分からなくなってしまう。葛葉達以外にも、もう一つの冒険者パーティーもキャラバンの何処かの馬車に乗っている。念には念をと言うやつだろう。
「んー……ま、平和に越したことはないよね」
「ですねー」
ぷらぷらと脚を振らし、鼻歌を歌う律。葛葉は身体を伸びさせてから、窓の外を見た。先と変わらずの光景が広がっている。遥空に浮かぶ雲、生い茂る木々、様々な生物が蔓延る、まさに陸の大海原。
そんな平原に、巨大な影が映される。影だけでも成人男性を五人ほど束ねて足りるような大きさの影だ。不思議に思い窓に頬を擦り付け空を見ると、太陽を覆い隠し日の光を遮る灰色の肌をした、竜だった。
「――っ!」
次の瞬間、馬車ごと大地をひっくり返すほどの衝撃が、襲ってきた。衝撃と轟く音はキャラバンの列の一番前からしてきた。
「――っ、な、何が!?」
馬車が横転し、車内で倒れていた三人はゆっくりと起き上がり、扉から外に出る。土煙が舞い上がる視界の悪い外には、御者の人や一般人の断末魔が響いていた。それを聞いた三人は、直ぐに防具を着て、武器を用意する。そして焦燥感に駆られながら、三人は断末魔の聞こえる方へ走り出した。数歩走り、視界が開けたと思った瞬間、信じ難い光景が広がっていた。
「……で、デカい」
「あ、あれは……ワイバーンでしょうか……? で、でも大きすぎる気が……」
律が目を見開き、衝撃を受けながらも冷静に魔獣が何なのか呟いていた。
「――た、助けて‼︎」
「や、やめろぉ‼︎」
と呆然としていた葛葉達に再び聞こえてくる断末魔。
巨大なワイバーンの足に、男が下半身を踏まれ必死に逃げようと叩いたり殴ったりと抵抗していたが、次の瞬間。顔がグシャという音を立てた。更に若い女性が身体を捕まれ、徐々に口元へ運ばれていく。
「や、いやぁ……た、食べないでぇ‼︎ ――お願いします! 助けて下さい! ゆ、許してっ‼︎ いやっ! いやぁああああああ――……」
伝わるはずのない言葉を言い続け、最後には断末魔を上げるが、それは途中で遮られた。
若い女性はまず頭を食われており、首からドクドクとドス黒い血を流しまくり、手や足はプラーンと力を無くしていた。ワイバーンはまた一口、若い女性の身体を口に運び、グググと引っ張り千切る。身体から臓物がボトボトと落ち、緑の平原を赤く染め上げた。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
一般人には悪い事をしましたね……。
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