六話 始まりの予感
すいません、遅れました。
晴れ渡る空、数頭の馬が嘶き、人々の声が響く。すでに開門されている、大門の前に群がるキャラバンを見上げ、葛葉は目を丸くさせ口を開く。
「まさかの護衛って……」
声を掛けてきた緋月の話を聞き、緋月の依頼を渋々承知した。そして指定された場所に着くと、無数の馬車が群がる光景を目にした。
「葛葉さんっ! 葛葉さんっ! 見て下さい!」
と声を大にして掛けてくるのは、装備を着込んだ律だった。律の声に目を向けて、律が指差すモノを見る。それは、
「白馬ですよっ‼︎」
「……う、うん」
白い毛並みの凛とした馬だった。嘶くことも無く、毅然とした態度で自分の仕事が来るのを待っている。
「いやぁ〜すいませんねー! ……いやはや、それにしてもこんなに可愛い冒険者も居るもんなのですなー!」
律が白馬に抱き付き、その毛並みに気持ちよさそうとしているのを眺めてると、声を掛けてきたキャラバンの長。黒色の肌に、サンタのような伸びた髭にモジャモジャの長い髪、きている服がパツパツそうな出張ったお腹をした男性だった。葛葉達を見るなりそう言い、頼もしい者達を見る目でニッコリと笑顔だ。
「最近はここら辺で盗賊が出て居ましてねー。いつもなら護衛は付けないんですが、今回は人を運ぶのでねー」
そう言い男性は馬車に乗り込む人達に目を向けた。全員で十四人か十五人くらいの人数だ。
「……あの人達はどこへ行くんですか?」
「王都ですね。今はかなり多いんですよー!」
と男性から言うと同時に、後ろから他の御者の男性が声を掛けてき、男性は失礼と言い葛葉達の元から離れた。それから暫くして、笛の音が響き、ゆっくりとキャラバンが動き出したのだった――。
「――どうかしましたか?」
『いや……遅いな』
街の大門から、キャラバンが出ていくのを眺める仮面の少女と側近の少女が、呟いた。ジッと葛葉を眺める仮面の少女は、少し考え、次に指を鳴すと同時にまた、呟いた。
『これで、やっと始まる――っ‼︎』
呟きと同時に、長いプロローグもこれでお終いだ。と仮面の少女は口角を上げ、歓喜を少し込めた声で放つのだった。
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