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二十話 闇が染めていく。

祝ニ章終幕!

「が……あぁぁぁぁぁぁっ‼︎」


咆哮し、痛む体を鼓舞し、天を睨め付け、怒りを力に変える。拳を握りしめ、これ以上ない力を解放する。それはあまりにも【英雄】とは言えない、獣の咆哮だ。


「叫んで何になる!」


槍を振り回して構え、仮面の少女は猛スピードで葛葉の心臓を、穿たんとする。回避不能の必中の攻撃。仮面の人物の槍は、葛葉の皮膚を裂き、肉を抉り進み、血を吹き出させ、体内への侵入を果たし、心臓を貫き、背から突き出る――はずだった。


「……――っ⁉︎」


一舜で剣を抜き放ち、槍の刃を斬り、おまけで取っ手の部分を切断された仮面の少女が、二歩三歩飛び退いた。


(なんだ……マジで覚醒でもしたのか?)


王道な覚醒などある訳が無い、だが葛葉のさっきまでの雰囲気、気迫、面構えが何もかも違うのだ。前髪に隠れている目は、仮面の少女を殺すように射抜いており、寒気を感じてしまう。


「主人公なんだよ……俺ぁ」

「……?」

「これでも主人公なんだ……ここで膝つけて、そのままやられるなんざ、主人公じゃねぇだろ」

「……ふふ、ははは。そうかそうか……覚悟が決まってるんだったら殺り易い。こっちも罪悪感なく殺れる」


吹き出し、一通り笑った仮面の少女は口元を歪め、槍を構える。葛葉は固唾を飲み込み、剣を握る拳の力をさらに強くする。


「どっちみち……罪悪感なんて感じねぇだろ?」

「あぁ、そうだ」


二人は、最後にそう言うと間を開けてから、一瞬で武器を構えた。両者共に同時に動き出し、剣と槍が打つかり合い甲高い音が響く。両者の力は片方の方が圧倒的に有利で、葛葉は表情に苦渋を浮かべる。


(くそっ……やっぱりそう簡単には行けねぇか)


一振りの槍の攻撃が、何振りにもなる猛攻へと成り変わり、葛葉の身体をズタズタにせんとする。葛葉は守りに入るしか出来ず、仮面の少女の猛攻はさらに勢いを増していく。剣で攻撃を受け流しても、また凶槍が迫ってくる。交わしても交わしてもキリが無く、徐々に傷が増えていく。的確に、関節部を狙ってき、持久戦になればこちらが負ける。華やかに槍を振り、大上段の一振りが下され剣の腹でそれを受け止めるが、剣を握っている手が痺れるほどに衝撃が伝ってきた。


「ほらほら、主人公なんだろっ‼︎」


槍を持って居た手を離し、仮面の少女は一瞬の隙を突いて葛葉を回し蹴りし、ガラ空きだった脇腹に減り込み、葛葉は遥向こうに吹っ飛んでいく。数秒地面スレスレのところを飛び、次第に地面に落ち転がる。


「――っ‼︎」


肋骨らへんが激しく痛み、息をしただけで痛くなる。腕を動かそうとするとズキッとした痛みがし、足を動かそうものなら直ぐに脱力してしまう。


「呆気ないなぁ……全く。いつもいつも、俺って奴は」


苦笑混じりに、嘲笑混じりに、大見得切っても毎回その通りにはならなかった。片膝を地面に付け、深く深呼吸を繰り返しているうちに、目の前に仮面の少女がやってきた。クルクルと芸術のように槍を振り回し、槍の切先を葛葉の眉間に向けた。


「……鬼代葛葉。お前はここで終わりだ」

「……――っ。そうか、お前なのか」


葛葉は仮面の少女を見上げ、ふとあることに気付いた。仮面の少女は、その葛葉の発言には言及せず、そのまま葛葉に魔法を掛けた。


「……眠れ、永久に――」


その詠唱を最後に、世界の色が反転し、闇へ落ちる。

【英雄】は敗れ、何もかもが失われる。世界は終わりを告げる――。

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

はい、TS化っ娘の醍醐味が無くなりましたね! タイトル詐欺ですね、完全に……。

で、でも安心して下さい、対策はあります……はい。

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