十九話 少女は夜に泣く
急にですがタイトルを変えました。
「私じゃ――っ‼︎」
葛葉はバサッ‼︎ と掛け布団を跳ね退け、腕を――何かを掴むように――前へ伸ばして、上体だけを起こして居た。そして急に起き上がった葛葉に、ウトウトと居眠りして居た五十鈴がビクッと肩を跳ねさせた。
「く、葛葉様……?」
「――……ぁ、五十鈴……」
「……っ」
暗い部屋で、月明かりに照らされる五十鈴の表情に目が行った。困惑と驚きが入り混じったような表情だった。
葛葉は、何故五十鈴がそんな表情をしているのか、疑問に思ったが。直ぐに答えは出た。目の奥が熱くなり、ポロ……ポロと目から数粒の涙が流れたのだ。
「……ぇ? 何で……」
何故自分が泣いているのか、葛葉には分からない。――いや、思い出せないのだ。次第に、数粒の涙は量を増し、大粒の涙が滝のように流れ始めた。
「な……んで? なんで、私泣いて……るの?」
涙を拭うが、また涙が溢れ流れる。何度も何度も、ジャージの袖で拭うが、涙は際限無く流れ続ける。
葛葉のそんな姿に、五十鈴がオドオドとし慌てているが、葛葉はそれにも気付かない。大粒の涙は掛け布団にも落ち、布を湿らせる。
何故、悲しくも無いのに泣いてしまうのか。何故、こんなにも胸が張り裂けそうなほど、辛く鋭い痛い身がするのか。葛葉は考えてみても分からない。そんな時だった。一瞬何もかもが楽になった気がしたのだ。
気付けば葛葉の顔は、五十鈴の胸の中に埋まっており、後からは優しい力で頭を抑え付けられている。そして、頭を優しく撫でる柔らかくて細い指、五十鈴に抱かれていることは一瞬で分かった。
「葛葉様、大丈夫ですよ。安心して下さい……」
「い……すずぅ〜」
葛葉は両腕を五十鈴の体に回し、ガッチリと捕まえるように抱いた。耳元で囁かれる声は子守唄のようで、優しい力で撫でられると気分が良くなっていく。細くて柔らかい体を抱き寄せ、葛葉は五十鈴の胸の中で大いに泣く。
いつもの葛葉はそこには居ない。今ここに居るのは、悪夢にうなされ泣き喚く、たった一人の少女だ。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
この度タイトル名を変えました。ややこしくさせてしまうと思います。すいません。
この作品を検索するときは「TS化転生っ娘は、」と検索すれば簡単に出てきます。
唐突に申し訳ございません。