十七話 争う者
主人公補正がやっとこさ掛かりました!
今までで一番の痛みだ。タンスの角に足の小指を打つ蹴るのよりも、腕をドアノブに打つけるのよりも、断然こっちの方が痛い。
「無駄な足掻きはやめろ、痛いのは嫌だろ?」
「――……」
葛葉は確かに痛いのは嫌いだ。悲しいのも苦しいのも辛いのも、この世の全ての苦痛や苦悩が嫌いだ。ましてや、自分以外の誰かがそれを味わうのも大嫌いだ。
『魔女め!』
『死ね! 死んじまえ!』
『消え失せろ!』
『お前なんか【英雄】じゃねぇ‼︎』
ふと、葛葉の耳に言われたことのない罵詈雑言が聞こえてきた。
それは記憶で見た、地べたに這いずり仲間を守らんとし、愚かな選択を科され、運命を操られ、弄ばられた、悲しき少女の記憶。恨み、嫉み、怨嗟、憎悪、恐怖、忌避、ありとあらゆる負の感情に押し潰され、圧死させられるような苦痛。おかしい、そんなのは間違ってる、何故傷付ける、何故避ける。お前らが罵り、見放しているのは、お前らを守りたいと願う、ちっぽけで何にもできなくて、仲間すら守れ無かった弱い少女だぞ?
「――……間違っている」
「……?」
俺は、英雄になりたい。アニメや映画に出て来る、無敵で最強のヒーローになりたい。子供っぽくても良い、ダサくても良い、惨めでも不格好でも……俺は、英雄になりたいんだ。
「起こせ、革命を……『白銀之騎士』」
「なっ⁉︎」
世界が歓喜した。それは、何の比喩表現でもなく、ありのままの事実だ。世界は歓喜と共に叫ぶ、『英雄が再びこの地に舞い降りた』と。純白の世界が淡く光だし、星屑の光が一点へと収束する。
「……借りるぞ」
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
主人公なのにこう言うの遅くない? と我ながら思います!