十六話 真実
早い!
『無意味だっての』
直後に葛葉の腕が、MG42ごと縦に裂け血を大量にぶち撒ける。そして目にも止まらぬ速さで腹を貫通された。
「――っ‼︎」
痛みに歯を食い縛るが、そんなのは無意味で目が熱くなってきてしまう。常人ならショック死しているはずの傷だ。意識があるだけでも、賞賛の声を掛けられるだろう。
「まったく、弱いな……。ま、仕方ねぇか」
仮面の人物は、前回同様の槍を上に上げると、被っている仮面を少しずらし口元だけ露出させる。露出した口元は、幼くも艶があり何処か艶かしい雰囲気を醸し出していた。そして声もだ、背丈通りの幼い声、背丈と言葉遣いには似合わぬ淡麗な口元。葛葉はそのことに驚愕を隠せない。何故なら目の前の人物は男だと思っていたからだ。
「……ははっ! 何だよ……手前ぇ女かよ」
「……何だ、今更気づいたのか?」
「気付けるか!」
仮面と変声機かなんかかは知らんが、ふろの中で喋ってるような声の人物の性別を、どうやって判別すれば良いんだか。
「でもまぁ、関係ねぇや――」
「……――っ⁉︎」
葛葉がそう言うと同時、葛葉の腹を貫き血を滴らせていた槍が、何本にもなってバラバラに地面に落ちた。初の驚愕をした仮面の人物は、直ぐに気を取り直し消えた葛葉の姿を探す。
「どうやら、この世界じゃあ……俺のスキルはめちゃくちゃ強化されるみてぇだぜ?」
声が聞こえたのは視界の斜め上、上空に飛び上がっている葛葉の声だ。葛葉はこの世界に来て直ぐに実感した事を伝えた。
(思い浮かべろ……)
記憶にある【英雄】の情景。一度【英雄】と称され、愚行を犯し魔女と言われた、愚かで哀れな【英雄】の姿を、情景を――あの、強さを。無防備で行動も取れない空中、格好の的だ。仮面の人物は予備の槍を取り出し、器用に片手でグルグルと回し、地面にカンと槍の石突で音を鳴らした。
「――んなっ⁉︎」
音がしたと同時に、仮面の人物の影が膨れ上がり、夥しい数の帯状の影が葛葉を捕える。そして二度、同じ音が響くと同時に黒い稲光が大気を走り、身動き一つできない葛葉を貫いた。
「――がっああぁぁぁ⁉︎」
痺れと痛み、目が破裂したかのような錯覚がし、大絶叫をあげてしまう。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
今日はいつもより早く投稿できたと思います!
更に内容も前回よりは多いと思います!