十四話 主人公です。
注意:これでも主人公です。
「行ったかな……。たく、あー思い出したくねぇ」
『葛葉』の姿が何処にもない事を確認した葛葉は、しゃがみ込み深いため息と共に唸るように呟いた。思い出すだけで吐き気を催す程に、胸糞が悪い。そんな感覚が葛葉を蝕んでいた。
「……よく、俺はあんな笑顔でいられんな」
『葛葉』の顔を思い出し、嫌な汗を腕で拭い、立ち上がる。葛葉は無為にこの世界で暮らしていた訳ではない。葛葉も葛葉でやれる事はやっていた。巨大樹に残された幾千万の『葛葉達』の記憶を見ていたのだ。
「どれも酷かったな……」
どの『葛葉』も行く着く先――幸せな未来には辿り着かず、偽善者だと魔女だと罵られ侮辱され侮蔑され、人の扱いを剥奪されて……と。中には一生の慰み者にされている自分も居た。それを見た時、どんなエロ本だと思ったが、自分にも有り得た未来だったのかもしれないと、そう思い悩んだりと。
「あぁー、本当にイラつく」
思い返しては、自分を犠牲にし蔑ろにし他を守ろうとして、自分が酷い目に遭う『葛葉達』に、葛葉は心の底から苛立っていた。
『それがお前って人間だろう? 自分に苛立つなよ……みっともねぇ』
「――っ!? お前っ!」
突如掛けられた声に、葛葉はバッ! と振り向き、葛葉より少し前で禍々しいゴテゴテした椅子に座っている、仮面の人物が居た。
『安心しろ、俺は今は殺さねぇ』
「……今はって事は――いつか殺すんだろ?」
『当たり前だろ?』
「そーかよっ!!」
肘掛けに肘を付け、頬杖をする生意気な画面に、葛葉は少し怒りを混ぜながら、手を構えた。形は勿論、銃だ。ただ――今回はいつもとちょっと違う。
「前はよくもやってくれたなぁ! 次はこっちの番だ! こいつで手前ぇを肉ミンチにしてやらぁ‼︎」
そう言うと葛葉は、手の中の創造した銃の引き金を力強く引いた。と同時に、仮面の人物に毎分一二〇〇〜一五〇〇発の暴力が襲った。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
こんな主人公は嫌ですね!
きっとストレスが溜まってたんでしょう……。