十三話 告げたい想い。
百話超えてもまだまだ投稿し続けますよ!
「そういえば、私は何でここに戻って来たんですかね?」
「……え、俺に聞くの?」
気不味い沈黙に耐え切れなくなったのか、『葛葉』がまだ此処のこともろくに知らない葛葉へと問い掛けてき、つい質問を質問で返してしまった。
「で、ですよね、すいません……」
「同じ葛葉でも、性格は違うのか……」
しゅんと小さくなり謝ってくる葛葉に、頬を掻きながら苦笑し葛葉は思ったことを言うのだった。本当にいろんな世界線という物があって、そんな世界からいろんな葛葉達が死に、この純白の世界にやってきているのだと。この世界に居る間にそれを知った。そして勿論、目の前に居る『葛葉』もその一人だ。
「……凄いな」
「――ぇ?」
「何でもねぇや……ん、何だ?」
ぽろっと本音が口から溢れ落ち、『葛葉』がキョトンと顔を傾けながら聞いてくるが、照れた葛葉はそっぽを向いてあしらう。そんな事をしていた時、急に純白の世界に一筋の淡い光が注がれ、『葛葉』を優しく包み込む。
「……もうそろそろ、みたいですね」
この魂のみの世界から、『葛葉』は肉体の存在している世界に呼ばれているのだ。この世界に来た理由は何であろうと、『葛葉』はこの世界にまた戻ってきて良かったと、そう思った。何故なら、彼を忘れてしまうからなのだ。誰からも忘れられ、孤独にたった一人。――否、これはただの同情なのかもしれない。自分と彼を重ね合わせて、憐んでいるだけだ。こんなのはただの偽善だ。
「……何を思ってるか知らんけど、そんな顔すんなよ」
ポンと頭に手が置かれ、優しい声音でそう声を掛けてくる葛葉。浮かない顔だった『葛葉』は、置かれた葛葉の手の甲に手を乗せ疑問符と共に、葛葉の顔に視線を向けた。
「人間笑顔が一番だろ? そんな顔してたら早死にするぞ。それに……自分で自分に言うのもなんかおかしいけど、可愛い顔が台無しだ」
一言余計に付け加え、葛葉は少し照れながらアニメのかっこいいキャラが言いそうな事を、自分に言った。今思えばどう言う状況だ?
「あーもろそろそろだな」
淡い光の輝きが増し、『葛葉』の髪や衣服が浮き始め、次第に『葛葉』本人の身体も浮き始めた。
——言いたいことがある、言わないといけないことがある。今しかないかもしれない、彼に二度と会えなくなるかもしてれない、今言わなければ、全てが間違ってしまう。
私では、皆が幸せになる未来を掴めない。
彼なら、皆が幸せになる未来を手繰り寄せてくれる。だから、言わなければ……。私では無理だと、あなたじゃなきゃ、駄目だと! 『葛葉』は勇気を振り絞り、彼に言葉を掛けようとして――。
「――ほら、行ってこい!」
『葛葉』の肩を掴み、葛葉はくるりと『葛葉』を後ろに振り向かせ、背中を優しく押してやった。瞬間、淡い光ではない眩い光が視界を覆い、何も見えなくなってしまう。『葛葉』は直ぐに声を掛けようと、浮いている身体を器用に振り向かせ、口を開け声を掛けた、
「……あの――っ!」
はずだった――。
読んで頂き、ありがとうございます‼︎
百話も超え、評価数が三百人を超えて、投稿初日じゃ想像も付かなかった今。すごく嬉しいです。
これも皆様に読んで頂いて貰ってるからです。どうかこれからも読んで頂きたいと思います。