表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/743

十二話 戻って来た葛葉

ちゃんと女の子っぽいですかね?

 何も見えない――。

 何も聞こえない――。

 ここは……何処?


「――よっ」

「……ここって」

「元々お前がいた場所」

「……あ、そうでしたね」


真っ暗な暗闇が晴れ、純白の世界で仰向けになりながら『葛葉』は覚醒した。一面白の世界。果てしなく続く大地。そして、視界のど真ん中に堂々と映る、自分が囚われていた大樹がある。天にも届きそうな大きさ、空を覆うかの如く生い茂る純白の葉。人が生命が自然が、どうこうしようとも倒せないであろう太過ぎる幹。なぜか、『葛葉』は故郷に帰ってきたかのような安心感に包まれる。


「……元気そうですね」

「あぁ、ここでじっとしてるだけだぜ? 逆に元気なくなるわ」

「でもまだまだですね。魂の傷は完全に治癒出来るまで、かなり掛かりますから」

「う〜わ」

 

ニッと笑顔な葛葉へ、『葛葉』は安堵と共に心配しながら問うが、葛葉はそれを軽口で返すほどには回復していた。

『葛葉』は知っている、この世界で千年という時を、この大樹から伸びている鎖に手首を繋がれ、ただじっとしていた。その時が来るまで。


「……どうだった? 向こうの世界は

「はい……! 凄く、楽しかったです」


孤独だった、寂しかった、会いたかった。皆んなに、会えなくなってしまった皆んなに――。満面の笑みで、目端に涙を溜めながら、『葛葉』は返事を返した。


「……そうか、良かったな」


葛葉もつられるように笑い、『葛葉』へ手を差し伸べる。葛葉は、この世界で彼女の――否、自分の過去を知った。数多ある、無限に広がっていく世界線の中で、自分がどんな生き方をし、どんな死に方をしたか。


「ありがとうございますっ!」

「……にしても、本当に【葛葉】っていう人間が元は男だったっていう記憶が無いんだな」

「……そう、です。記憶改竄能力が働いているんです。私も、あなたの記憶はあの世界では無くなってしまいます」


葛葉の胸はモヤモヤで、酷く辛い痛みがしている。これがこの、目の前の『葛葉』の心境なのだ。この世界に集まる魂は、幾多の世界で志半ばで息絶えた自分だ。別人のようで別人じゃない、別人の自分。


「そうか……。まぁでも、男に拘ってる訳じゃねぇしな。別に前世の性別が……自分の性別なんてどうでもいいしな」

「悲しく無いんですか?」

「あぁ、一ミリもな」


葛葉という男は、いつだって自分の事はどうでも良いのだ。最悪自分の存在が消えてなくなっても、泣くことは無いだろう。そうやって、葛葉はいつも我慢をする。

読んで頂き、ありがとうございます‼︎

これってTS化なの……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ