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第一話 風呂と百合は至高

読もうと思っていただき、ありがとうございます‼︎

ブックマークが七件にもなって居て泣き喚いてしまいました。登録して下さった方のために、面白くなるよう頑張ります!

夜が明け、朝日が街を照らし出す。

そして、それから何時間か経ち、人々が起き、街が騒がしくなる。


「うぅ……眠〜い」


とそんな中で、一人ベッドの上でお腹を出し、額に腕を乗せる少女が一人。

少女――葛葉は外から聞こえて来る喧騒と、太陽の光に顔を歪めている。前世では、真っ暗な部屋でまだまだ眠っていたろうが、この世界では違う。カーテンは開けられ、無駄にでかい窓から陽光が元引きこもりの体を焼き、喧騒が覚醒へと誘う。


「……葛葉様。起きて下さい、もう既に朝ですよ?」


そう声をかけてきたのは、傷が癒えるまで世話をしてくれたメイドの、スミノさんだ。


「…………おはようござます」

「おはようございます。さっ、早く起きて下さい!」


とスミノは強引にベッドのシーツを巻き取った。ゴロゴロと葛葉の体がベッドの端に転がる。そして数十秒して、むくりと起き上がり、葛葉は大きく欠伸をする。


「葛葉様……お風呂に入られては?」

「え……何故に?」

「いえ、髪もボサボサですし。昨日、帰ってきて風呂入りましたっけ?」

「あっ!」


昨日は疲れて、この部屋に案内されてホテルみたいなベッドがあったから転がったんだ! それでそのまま寝たんだ。


「今から入っても良いですか?」

「構いませんよ。それに緋月様も入ってますし」

「へぇ〜そうなんですか?」

「はい、昨日は……徹夜で仕事をしていましたからね」


ギルド長って大変なんだな。いや当たり前か。




今まで着ていたジャージを脱ぎ、昨日買い直ぐに着たブラとパンツも脱ぐ。もう既に違和感は無くなっていた。


「……複雑だ」


そう言い残し、洗濯用籠に入れる。着替えの畳んである籠には既に昨日買った下着があり、洗濯されたばかりだった。これらもスミノが用意してくれた。


「半日も経ってないのに、もう乾いてるとは……」


驚きつつ、異世界にも乾燥機があるのかと疑念を抱いてしまう。


「さて、早く入るか」


バスタオルを手に、浴場への扉を開けた――!


「――ってどわぁ‼︎」


と同時に驚きの声が聞こえてき、声の方向を向くと、お湯に浸かっている緋月が居た。


「って、なんだー葛っちゃんかぁ〜」


目の下に隈ができてる緋月は、葛葉を見るなり安堵し息を吐く。その一連の行動に葛葉は顔を傾げる。


「てっきり葉加瀬がまだ残ってる書類を持ってきたのかと思ったよ……」


その声は震えており、どんだけ大変だったんだと、葛葉の口を引き攣らせる。

そんな葛葉をじっと見て、緋月は自分の頭を差し、


「……葛っちゃんヘアゴム持ってる?」

「へっ?」


当然知らないことは承知の上で聞いた。


「ヘアゴムだよ、これこれ。葛っちゃん髪長いから結ばないとー」

「あー」


今まで男だったからな、そういやこの体髪長いんだった。


「あっそっか。葛っちゃん性転換者だったね。じゃあボクが結んであげるよ!」


ザパァと勢いよく湯から上がる緋月。お湯から現れたのは断崖絶壁の胸。起伏なんて存在しない胸を見て、葛葉は……小さいなっと思った。


「――っ! 今なんか考えたかい!?」

「い、いえ何も」


葛葉の目線が何処にあるか気付いた緋月は、少し怒りがこもった声で聞く。その緋月の発言に葛葉は顔を逸らし目を泳がせる。

心読めんのかな? ギルド長の前では思わないようにしとこ……。


「……それより、良いんですか?」


逸らしていた顔を緋月に向け、ふと思ったことを問う。緋月は、それよりって……、とブツブツ言っていたが。


「何がだい?」

「いえ、一応元男なんですけど」

「ん? あぁー別に構わないさ」


マジか。葛葉は心の底から驚いた。普通今が女でも、元は男だ。そんな奴に自分の裸見られるなんて、自分でも嫌だ。


「ボクに欲情したのなら! 百合でイチャイチャ出来るじゃないか!」


……あっ。刹那の一瞬。葛葉は全てを悟った。

目の前にいるこの人は、ヲタク文化に精通していると。そして、この人の好きなのは百合だ。もしたかしたらレズかもしれない、と。同性愛者なのは知ってたが、まさかその域とは……。


「ささ、座った座った」


バスチェアのあるところに連れてき、葛葉を座らせると直ぐに髪を結んでいく緋月。妙に手付きが良い。緋月は生まれから性別は女なのだから慣れていはいるのだろうが……。


「……緋月さんは妹弟とか居たんですか?」

「――っ。…………居た、よ」


言葉を詰まらせ、重々しく言う緋月に葛葉は目を点にする。葛葉は鈍感系主人公ではない。


「あの、嫌でしたら言わなくても」

「……悪いね。雰囲気を悪くしてしまった」


止まっていた手を緋月は動かし、結び直す。葛葉は余計なことを聞いてしまったと反省するのだった。

それから暫くして、緋月が葛葉の髪を結び終わる。


「さっ! 出来たよ!」


緋月がそう言い、鏡の曇りをシャワーで流すと、葛葉の髪が団子に結ばれていた。


「ふふん、ボクとお揃いさ!」


と緋月は笑ってみせる。

葛葉の団子は緋月と比べ、かなり大きい。大体、緋月より葛葉のほうが髪は長いし多いため大きくなるのは仕方ない。


「んじゃ、ボクはまた入るけど、葛っちゃんも入る?」

「はい」

「それじゃちゃんと体洗うんだぞ〜」


そう言い残し、緋月は足速に去っていく。が、葛葉が体を洗おうとすると、アイタッ⁉︎ やヘブっ!? などと緋月の声が聞こえてくる。終いには湯に飛び込む音と、痛い!? と声が聞こえ来た。


「……何やってんだか。ん? ……やっぱり異世界なのか? ここ」


葛葉は自然にレバーをひねり、お湯を出す。と途中で気付いた、異世界になんでこんなもんが? と。いちいち声を荒げるのも、もう面倒臭くなり呟くようにツッコんだ。


「異世界感が微塵もねぇな」


悪態を吐きながら、シャワーで身体の汚れを落とし浴槽に向かうと、ブクブク〜と口まで湯の中に入り、ジト目で泡を作る緋月をみて、


「何してんですか?」

「……ぷはぁ! こ、これで、日々の激務への耐久性を高めているんだ……」


能天気そうで、全然能天気じゃないんだな。

眠気からか、目を細めている緋月は、普段の能天気振りがあまり感じない。ブラック企業に捕まった会社員みたいだ。


「だ、大丈夫ですか?」

「はは……大丈――っ!?」


指をグッジョブとしようとして既で止まる。たった一瞬に緋月は、ある策を構築した。

この激務によって癒されない疲れを、いま、目の前にいる美少女に癒してもらおうと。葉加瀬でも良いのだが、あれは美少女ではなく、美女だ。緋月が好きなのは美少女だ。


「あ、あー疲れて今にも沈みそうだぁ!」


大根役者よりも酷い演技で、葛葉の同情を買い、葛葉に癒してもらう。これが緋月の考えた策だった。そんな事は露知らず、葛葉は……。


「……何がしたいんですか?」


大根演技痛恨の失策。葛葉は変な目で緋月を見る。


「あ〜……っと、助けくれないかな〜って。エヘヘ」

「……?」


葛葉は終始はてな顔だが、身体が冷えるのを避けるためか浴槽に入る。


「隣いいですか?」

「ん? あ、あぁ! 構わないさ!」


葛葉は緋月のぎこちない言動に首を捻るが、お構いなしに肩までお湯に浸かる。


「はぁ〜……疲れが取れますね〜」


二日前の傷と昨日の街案内で、葛葉の身体はかなり堪えていたのだ。そんな身体にはかなり効く。


「…………葛っちゃん」

「はい?」

「ボクの疲れを取るために、癒させてくれ!」

「…………はい?」


湯に浸かって、のほほんとして居た葛葉は耳を疑った。いや緋月の正気を疑った。普通そうだろう、癒させてくれ! なんて普通は言われない。


「い、癒すって言われても……てか、下心ありますよね?」

「――っ!? べべべ別に⁉︎ そんなことないとも!」


絶対そんなことあった! 慌てふためく緋月、驚きまくる葛葉。双方何がしたいのか分からない。


「頼む! 癒してくれたら頑張れるから〜」


とうとう涙目になり、緋月は両手を額の高さで合わせ、何度も頭を下げる。そんな緋月の見るに耐えない姿を見て、葛葉はどうするか、と思案する。そんな時、ふと父との昔の会話を思い出した。


『葛葉。相手が困ってたら、あれこれ考えんな。考えるより、助けるんだ』

『……なんだよ急に。……それがどんな人でも?』

『あぁ、善人だろうと悪人だろうと、困ってるなら助けろ。それが出来る奴が一番カッコいいんだからな』


父は葛葉にそう言ってくれた。考えんな、困ってる人が居んなら助ける。それが『英雄』ってんだよな。


「……はぁ、分かりましたよ。で、何すれば良いんですか?」


葛葉が渋々承諾すると、緋月の泣き顔がパァー! と笑顔に変わった。


「じゃ、じゃあボクのことをぎゅっとしてくれ!」

「……絶対下心ありますよね?」

「……」


無言になる緋月に、やっぱりやめようかなと思ってしまう。だが、そこは割り切って仕方ないと緋月の手を取り、身体を寄せる。


「……これで良いですか?」

「おぉ……………最高〜」


と蕩けそうな顔して、いや蕩けてる顔の緋月がぐへへ〜と言いながら、呟く。


「あんま変なこと言ってると、やめますけど?」

「えだ⁉︎ ダメダメ‼︎ まだこうしてたい〜」


はぁとため息を吐き、葛葉は仕方なく緋月のことを抱くのだった。それから暫くして、


「二人とも、何やってんですか?」


扉を開けいつ間にか立っていたスミノが声を掛けてきた。

読んでいただき、ありがとうございます‼︎

これからもこの作品を読んで下さると嬉しいです!


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