一話
【勇者】女神の信託により勇者に認定され魔王討伐の旅に出る
【戦士】勇者の幼馴染 心優しき力持ち
【僧侶】女神教会の回復術師 勇者の旅に同行する
【狩人】旅の途中で出会った物静かな弓使い 魔族に攫われた姉を探すため同行する
【王】王国の王 魔王に対抗するために勇者を送り出す
【姫】第一王女 勇者の婚約者だが…
【近衛騎士】王国の騎士 野心家
【魔王】魔族の国の王 大陸全土を支配するため侵略する
ーーー魔王国·魔王城近郊の森ーーー
「……どうだ?」
「結界はバッチシよ!」
「魔物除けも炊いた……周囲も問題ない……」
「こっちもだいたい準備できたよ」
「よし!じゃあそろそろ始めようか……カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!!」」」
「ぷはぁー」
「やっと一息つけるわね」
「ああ……」
「ほんとにボクたちやったんだね……」
「ああ、長かった旅もこれで終わりだ!」
「ほんと長かったわ……でもみんなで無事帰れてよかった……」
「ああ……ほんとによかった……」
「…あとは王国に帰るだけだな」
「魔王は倒したしその混乱に乗じれば来たときより楽に魔王国も抜けられると思うわよ」
「帰れば勇者はいよいよ姫と結婚だね」
「そうだったわね。かなり待たせちゃったもんね……」
「同じ村で育った勇者が次の王様かー……感慨深いなぁ……」
「………はぁ」
「「「?」」」
「いやぁ、正直言うと帰りたくないなぁと……」
「えっ!!どうしてよ!?魔王を倒した英雄の凱旋よ!国を挙げてのお祭りになるんじゃない?」
「それなんだが……あッ!そろそろその鍋いいんじゃないか?」
「えっ!?……そうだね。つぎ分けるよ……って、そうじゃなくて!!」
「まあまあ、食べながら話すよ。…まあぶっちゃけ姫と結婚したくないなぁと。お前ら謁見の時王様の横にいたの見たよな?」
「ええ。可愛くて優しそうだったじゃない」
「あれな…姫じゃなく他国の王子に嫁ぐ予定の妹らしい」
「「えっ!!」」
「姫のフリして表舞台に立っているらしい。本物は俺達よりも10歳も上でしかもかなり太って引きこもってる。狩人が調べてくれた」
「なんでもっと早く言わないのよ!」
「すまん。俺が狩人に口止めしたんだ」
「…情報を掴んだのが魔王軍の攻勢が激しくなる直前だったからな…。二人に要らん気を遣わせないようとしたんだ」
「でもそれって行き遅れを押し付けようとしてたってこと?」
「…おそらくそうだろう」
「うわぁ。命懸けで苦労した報酬がそれって…」
「しかもそれって王国の上の連中全部グルよね。そこまで腐ってたとは思わなかったわ」
「だろ?魔王討伐の褒美ってよりも罰に近いじゃん。それに戦うことしかやってきてない俺が王になって国の運営なんてできると思うか?」
「ゆ、勇者ならだ、大丈夫だよ。きっと……それか大臣に任せるとか?」
「ちゃんと言ってあげなさいよ。無理だって」
「人の心を掴むのはずば抜けているとは思うが……政治となるとな……」
「だろ?そもそもやりたくもねぇし。三年前ぐらいに魔狼将軍倒したあとボロボロで一旦王国に帰ったときあったろ」
「あぁ……強敵だったよね」
「あんときに見ちゃってさ」
「何を?」
「庭園で姫と近衛騎士がキスしてるとこ……」
「「えっ!?」」
「………」
「狩人驚いてないな。やっぱり知っていたか」
「……すまない……言うかどうか迷っていたんだが……二人はそれ以上の仲だ……」
「というと?」
「近衛騎士がなにやら企んでいると情報が入ってな……少し調べていたんだが、見てしまった……二人がベットの上で裸で抱き合っているのを……」
「アイツデブ専だったのか」
「こ、好みは人それぞれだから……」
「私、初めてあったときいやらしい目で見られたけど太ってないわよね……」
「むしろ細すぎる方だろ……ムネ以外……って話が逸れたな」
「いやそうではなく、どうやら姫に取り入って近衛騎士団長のポジションなり自分の子供を勇者の子供と偽って生ませて地位を得ようと企んでいるようだ」
「アイツ野心家っぽいもんなぁ。俺への対抗心隠しもしなかったし。」
「魔王を倒したら僕が次の騎士団長だって言われたときもすっごい睨まれたよ」
「ってことはちょうど良いな。姫はアイツに押し付けよう!姫も会ったこともない俺より常に側にいる近衛騎士とくっついたほうが幸せだろ。中身はあれでも顔は良いし」
「いいの?王国に戻りづらくなるんじゃない?」
「むしろこうなったら戻るつもりはねえよ。魔王と相討ちになって死んだことにしようと思う。」
「「「えっ!!!」」」
「その方が探されもしないだろうし自由に過ごすにはもってこいだろ?」
「それで聖剣を魔王に突き刺したまま置いてきたのか」
「ああ。勇者の俺にしか持てないし魔族には触れないから魔王を蘇らせることもできないだろ?」
「そうかもしれないけど……この後はどうすんのよ!まだ魔王軍幹部も全部倒してないじゃない」
「残りの幹部ぐらいなら他所の国の英雄達でも相手できるだろ」
「そうかもしれないけど…」
「血生臭い戦いはもういいよ。これからは……狩人姉たちみたいにどっか人の居ないとこに隠れ住むとか?」
「あれびっくりしたわよね……。魔族に攫われたと思ってたら、むしろ逆で一目惚れして押しかけ女房してたなんて……」
「子供たち可愛かったね」
「……その件はホントになんと言ったらいいか……迷惑をかけた。」
「いいのよ。無事再会できたんだし。」
「それに姉旦那みたいに争いを好まない魔族もいるって知れたしな!」
「そうそう。」
「……だったらオレもその案に乗ろうと思う。ギルドの次期グランドマスターなんて報酬どう断るかずっと考えていだ。そんなことより姉のそばで姪や甥たちと共に暮らしたい。」
「……ボクも王国騎士団長なんて無理だし。人見知りなのに人に指示するなんてできないよ。」
「そうだよな。元々この旅に付いてきたのも俺が無理やり連れ出したようなもんだからな」
「そうだったの?」
「あぁ、小さな村からでて色んな人に会えば人見知りも治って少しは自信もつくだろ!って。戦いも村出てからだしな」
「そうだったの!でも初めて見たときからその大斧の扱いは様になってたからてっきり戦闘経験あったのかと思ってたわ」
「それは木こりの手伝いもやってたからかな?村ではただの農夫だったよ」
「……戦士はそっちのほうが似合うな」
「それか料理人ね!ほんと戦士のご飯がなかったらこんな旅続かなかったわよ」
「えへへ、ありがとう」
「僧侶はどうする?」
「……そうね。協会に戻っても聖女なんて祭り上げられてジジイ共にエロい目で見られるだけだし。それにお酒もギャンブルも気軽にできなくなっちゃうし。」
「むしろお前は後者の方が重要だろ!」
「えへへ。それに純潔を重んじる聖女なんかになったら……エッチもできなくなるし?」
「「「……」」」
「なんか言いなさいよ」
「その……戦士、狩人、すまん。実は僧侶とそういう関係になっちまった」
「えっ!勇者も?実はボクも僧侶と……」
「……オレもだ……」
「えっと……僧侶?」
「あんた達話してなかったの?みんな知ってるもんだと……」
「言えるか!お互い酔っぱらってたとはいえパーティーメンバーとそういう関係なんて!」
「そ、そうだよ!それに僕だけだったと思ってたし……」
「その……スマン。オレは知っていた……。も、もちろん知ったのはオレが僧侶と関係を持ったあ、後だぞ」
「珍しく狩人が狼狽えてるぞ」
「お姉さんがいなくなった真相を知ったとき以来だね」
「もういいじゃない。みんな気持ち良くしてくれたし!みんなも気持ち良かったでしょ?」
「「「ハイ……」」」
「じゃあこの話はおしまい!これからどうするか話しましょ!」ーーー