一人目
不定期更新の小説です。
私の親は何かあるごとに「青春を大事にしろよ」「今しか遊べないんだからね」などと言ってくる。
ならば、今の私も輝かしい思い出になるのだろうか。
先日、人生初の彼氏ができた。ずっと好きだった彼に勇気を振り絞って告白したらOKをもらえた のだ。 それからの高校生活は夢のようだった。一緒に登校して、クラスではみんなの前で堂々と イチャ イチャして、手をつないで帰る。毎日が幸せだった。
「なぁ、今日親いねぇんだけど」
顔を真っ赤にしながら話す彼がとても可愛かった。 はじめては痛さや恥ずかしさが混ざってよく覚えていない。 不思議と二回目以降は恥ずかしくなかった。一度お互いの裸を見ているというのもあるのかもし れないが。
しばらくして、生理が来なくなった。
「噓でしょ?」 心当たりは勿論ある。しかし、認めたくなかった。2回、3回、検査キットのメーカーを変えたり、恥 ずかしさを押し殺して産婦人科にも行った。伝えられる結果はどれも同じだった。
「どうしよう」
妊娠してから3か月が経った。お腹は膨らんできているがまだ誤魔化せていた。クラスのみんな には太ったと説明していた。親にも。
「今日もうち来ない?」
「行く」
このころにはもう恥ずかしさは消えていた。
「なんか、太った?」
私のお腹をつつきながら彼が冗談交じりに言ってきた。
「少しね」
「少しって......だいぶお腹出てきてるじゃん。他の奴も言ってんだぞ」
「他の奴って?」
「クラスのやつらよ。田中とか、鈴木とか」
「そうなの?」
「ま、間違いなく付き合い始めた時よりは太ったな。デブは嫌いだぞ?」
毎日吐いた。毎日お腹を殴った。毎日自分を責めた。毎日嘘をついた。
「太っちゃって」
「少し食べ過ぎて......」
「毎日幸せでさ」
「彼?とてもいい人なの」
誰かに言いたかった。味方が欲しかった。それでなにか変わるわけでは無いのだけれど。
親に内緒で通っている産婦人科の帰り道。
「おい?」
振り返ると彼がいた。顔は真っ白。
「産婦人科からでてきたよな?」
「なんでだ?」
「違うよな?」
「何か言えよ」
きっと誤魔化す方法はあった。でもつかれた。
「責任、とれる?」
読んでいただきありがとうございました。