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ショートショート12月~2回目

エール

作者: たかさば
掲載日:2021/12/22

 ちょうど一年前、私は一人の青年を見送った。

 夢を抱いて一人旅立つことを決めた若者に、エールを送った。


「自分を見失わないで、生きていってね。」

「僕は必ず、夢を叶えます!」


 便りがないのは、元気な印と信じていた。

 連絡しても返事が来ないのは、夢を叶える事に忙しいから仕方がないと思っていた。



「あ、久し、ぶり…。」

「…え?はい?」


 突然街の片隅で声をかけられて言葉を失った。


 生気のない、無表情。

 光のない、暗い瞳。

 力のない、声。


 夢を語った青年は、別人と成り果てていた。


「夢なんて、結局無駄なんだよ。」


 夢を語ったその口で、絶望を口にしている。

 夢を語ったその口で、後悔を口にしている。

 夢を語ったその口で、侮蔑を口にしている。

 夢を語ったその口で、怨恨を口にしている。

 夢を語ったその口で、憤怒を口にしている。


 夢はどこに行ったのかと聞いたら、他人には関係ないと一刀両断された。


 夢など持ったのが間違いだった。

 夢など持ってはいけなかった。

 夢など持つべきではない。


 夢のせいで自分はここまで落ちてしまった。


 夢など。

 夢など。

 夢など。


 何を言っても聞こうとしない。

 何を言っても聞いてくれない。


「あんたも早く現実に気づいた方がいいよ。」


 言いたい事だけ言って、青年は人ごみに紛れてしまった。


 連絡先は、教えてもらえなかった。


 ……縁は、切れた。


 私は夢を失った青年に切り捨てられたのだ。


 たった今、たった五分の邂逅でげっそりだ。


 ……切り捨てられて、良かったのだ。


 無理に、人間関係をつなぐ必要は、ない。


 ……大丈夫。

 これから、いい出会い、いっぱいあるから。


 ……大丈夫。

 これから、いい言葉、いっぱいもらえるから。


 私は、私にエールを送って。


 人混みの中に、混じった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 飲んでも呑まれるな!。(絡み酒反対!) 理想に呑まれずにホロ酔い程度に嗜むが一番良いのでしょう…が。(まあ無理かなぁ…)
[一言] なんか、病みますね。 夢を諦めたくなる気持ちはわかりますけどね。他人に伝播しないでほしい。
[良い点] こいつはひどい。リアルでやられたらゲッソリ間違いなし [気になる点] 縁を斬り捨てるのにちょっと強さを感じたような [一言] 他人に依存するとまずいですねやはり
2021/12/22 22:10 退会済み
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