依頼台本 HAPPY END
お馴染みのレストランの窓側の席奥から2番目
先に着いている君の横顔が誇らしかった。
俺らの待ち合わせの席。いつもの場所。
料理を一通り食べ終わり俺は切り出した。
男「クリスマスプレゼントなにがいい?」
女『え?笑 今年のクリスマスは一緒にいてくれる気になったの?』
「いや、ほら、俺さ毎年毎年一緒に居られなかったじゃん。だから、今年こそはと思って取ったんだ。休み。」
『え?まじ?ほんとに!?嬉しい!!』
「いつも我慢させてごめん。だから今年は美味しいもの食べて、楽しく過ごそう!」
『よっしゃー!!!楽しみだあー!!』
「で、欲しいものはなに?ま、まさか……俺?」
『いや。結構です。』
「えー!!!ひどいわっ!!」
『何言ってんの笑。えっとねーエルメスのバーキンかな……?』
「エルメスの…バーキン…おい!!!めっちゃ高い!!ネットで今調べたけど!めっちゃ高い!!」
『あははは!冗談だよー!』
「バッグに50万……ごじゅうまん……」
『冗談だって!正直言うと、〇〇が居てくれるだけで…幸せだよ?』
「お、おい。ばっかおまえ!いや……うん。俺も嬉しいよ。」
『やだ!!〇〇が素直!!めっちゃウケる!!』
「まあ、クリスマスまであと一ヶ月。楽しみにしとけよ!首洗って待っとけよ!!」
『なんの果たし状よ!笑 うん。楽しみに待ってる。じゃあまたね。』
「おう。またね。」
☆場面転換推奨10秒
(入店チャイム)
「くっそー!エルメスのバーキン!?さすがにきつい!キツすぎる…。だってこれ…買っちまったもんな。付き合ってもう4年。そろそろと思って買ったけど。いやいやいや、俺ロマンチストすぎるでしょ!プロポーズがクリスマス!?思い立ったが吉日って言うけどさぁ。いや。俺ずっと待たせてたんだ。今だ。よし。指のサイズは9号。間違いない。よし……渡す。渡すんだ。」
「あれ?これ…エルメスのバーキンじゃないけど、これ、あいつに似合いそう。」
俺が手に取ったのは白いマフラー。
あいつの綺麗な黒髪に似合う気がした。
想像した自分の気持ち悪さに驚きながら口元が緩んだ。
「すみません。これください。」
これで準備OK。
あとはクリスマスを待つだけだ。
☆場面転換
『クリスマスのお店もう決めた?』
「いや…まだなんだよ。」
『いいこと思いついたの!聞いて!!』
「どこ??」
『いつものレストラン!笑』
「え?クリスマスくらい別のとこにしないか?」
『いや!いつものレストラン!
イルミネーションもあるし!ご飯も美味しいし!ケーキもあるし!!店長さんとも仲良いし!!』
「そ、そうか…」
『そして、特別な日になると思うし…ね?』
何も言い返せず、そっと目を逸らす。
『それが答えなんだよなあ。』
「う、うるさいな!!じゃあ!いつものとこ予約して、美味しい料理出して貰えるよう店長に話しておくから!」
『たのしみにまってるぞ。笑』
☆場面転換
寒い冬、お馴染みのレストランの窓側の席奥から2番目。
俺らの待ち合わせの席。いつもの場所。
『おまたせ!!え?〇〇が先に着くってめっちゃ珍しいじゃん!!』
「いや…まあな。早く座りなよ。」
『照れ隠しか〜?』
いつもとは違う特別な料理。
味がしない。
指先が震える。
「あのさ……△△。俺さ、クリスマスに休みも取れねぇし、エルメスのバーキン買えるほど金持ちでもねーしさ、でもこんな俺だけど、△△の事大事だと思ってる。俺と…けっ……結婚してくれませんか?」
『嫌です。』
「え…」
『嫌だよ!!せっかくのプロポーズに自分のダメなとこつらつらあげる男なんて!笑 これが面接だったら落ちるよ!?ほら!自己アピールしなさいよ!これだけ俺は凄いから結婚しなきゃ損するぞ!って思わせてみろ!!』
「は…え…?あ…真面目に働きます。」
『はいそれで!?まだあるでしょ!足りないよ!』
「結構…部下には好かれます…」
『はい!素敵!ほらほら次々!』
「料理が得意です!!作るのが好きです!」
『はい!家事できる男の人!アピールポイント高いよ!』
「あと…は…」
『ほら!御社に入社したらなにするの!?』
「え…あ…△△と結婚したあかつきには、質素かもしれませんが食べることに困らない生活をさせてみせます!!」
『お!いいぞぅ!』
「△△と結構したあかつきには!毎日△△を笑わせてみせます!俺も笑います!楽しい家庭にします!!」
『ちょ…まって声が…!』
「△△は!明るくて、優しくて!一緒にいると楽しくて!俺に少し意地悪で!照れ屋で、意地っ張りで、普段から可愛いけど…笑うとすっげぇ可愛くて…!俺の事愛してくれてて!服とか超おしゃれで、俺の今日の服とかも一緒に選んでくれて。仕事が忙しくて、寂しい思いさせてるのになんだかんだ笑って仕方ねーなって、ほんと口が悪い所も凄い親しみやすくて!料理なんてすっげーうまくて!!!!」
『声でかい!声でかいって!!』
「俺の1番いいところは!そんないい女の△△を見つけたところです!!!!!!こんな俺と!結婚してくれませんか!!!」
(出来れば拍手効果音)
レストラン中に響く拍手。
ノリに乗って興奮しすぎ、周り全てに聞こえていたことに気付く。目の前には真っ赤な顔の彼女。
俺自身も息が止まりそうなほど恥ずかしくすごい勢いで椅子に座る。
『…あなたは大変優秀な方のようです。こちらからもよろしくお願いします…。』
小さめの声で彼女は言い俺の顔を見た。
照れた笑い顔はこの世界で1番綺麗だった。
☆場面転換
あれから何度目かのクリスマス
お馴染みのレストランの窓側の席奥から2番目
俺らの待ち合わせの席。いつもの場所。
窓から見える君の横顔が好きだった。
「いつまで経っても変わらないな。お前は」
目の前の君の笑顔に語りかける。
あの日の帰り道
浮き足立って家路についた。
鳴る携帯。
聞いたのは君の時間が止まった知らせだった。
最期にあったのは小さい箱に収まった君。
花で飾られ俺のあげた白いマフラーを巻いて。
眠ったままの君。
「起きろよ…。まだ式場もなんも決めてねぇだろ…?
起きろよ!起きてくれよ!起きねぇなら俺も…俺も連れてってくれよ…。」
俺の声にも目を覚まさない君を見て急いで俺は宝石店に向かった。
「これで…今持って帰ります…」
お幸せにと渡された袋に視界が歪む。
君の薬指に買ったばかりの指輪をはめた。
「急いで買ったから…お前の意見聞けなくてごめんな…ごめんな…」
あの日から何度目かのクリスマス。
必死に働いて指輪のお金も返し終わった。
今の世の中に俺はもう必要ない。
必死なうちに前を向けるかと思ったが前がもうどこなのかもわからない。
いつもレストランをあとにして、きらきらと光るイルミネーションを抜けて、家路につく。
あの日と同じ道のりで。
「もう…無理だった。無理なんだ!!無理なんだ!!あんなに愛したんだ。あんなに好きだったんだ。今でも…愛してるんだ。」
歪む視界の中、キラリと何かが光った。
俺が最期にみたのは君の泣き顔と光る指輪ー・・・