やっと来た………
この世界に転生して1週間半。
俺は初めて窮地に立たされている。ようやく、主人公っぼい人が来た。
最初は住処にしている海域での違和感から始まった。いつもは静かな海で、モスキート音の様な嫌な音が鳴っていた。
初めはサメにも耳鳴りがあるんだな。と気にしないでいた。でも、それは次第に大きくなる一方であった。
流石に耐えきれなくなったサメと取り巻きは住処から離れた。その瞬間、網が下から上げられてきた。俺たちは一網打尽になって空中に出てきた。
「おっ…。奴が掛かったぞ!」
「思っていたより大きいな。」
「これが賞金首サメか。」
四隻の船で巨大の網を仕掛けていた。
船の上には大量の人間がいる。どうやら、本腰を入れて俺を殺しに来た様だ。
なるほど、あの音は俺を此処に誘き寄せる為のものだったんだな。
はぁ、まんまと俺は作戦に引っかかった間抜けと言うわけだ。だけど、なんで俺の居場所が分かった?
此処に戻る時は船などの追跡を恐れて、出来るだけ深海を通って来たと言うのに、世界中の探知機を知っているわけでは無いが、流石に深海を連続で泳いでいる魚をピンポイントで特定は不可能だろう。発信機でも着けられない限り。
「それにしても、ジャズの御手柄だな、こいつの捕獲に成功したのは。」
「あぁ、あいつが発信機をつけてくれたからだな。」
「相方のバースは残念だったな……。」
「そうだな…。弔いになるか分からないが、この野郎を殺して一部は墓に備えるとするか。」
ふーん、バースね。
確か、約1週間前に食った奴も、バースって名前だったな。転生して初めての人からの反撃を喰らったため。あの時の事は覚えている。
あの時喰らったのは、モリだと思っていたが、どうやら発信機だったみたいだな。あれから背鰭に違和感はあったが、傷跡になっているんだと思ったが、発信機が付いていたんだな。
それが分かればいつまでも此処にいる必要は無いな。
「な、なんだ!」
「船が揺れてる!」
「おっおい、あれっ!」
そこには、網を噛みちぎるために、網に噛み付く俺の姿があった。
「慌てるんじゃない!あれは、鋼鉄製の網で出来ている。そう簡単に壊れはせん。」
「そうですよね。」
「あぁ、大丈夫…だよな。」
船長っぽい人が一喝すると、慌てていた人らは落ち着きを取り戻し始めていた。
「ですが、これまで、多くの人を食ってきた。人喰い鮫…時間を掛ければ網が壊れる。もしくは、破損部分が重さに耐えられず壊れる可能性が有ります。早くとどめを刺すのが適切でしょう。」
明らかに他とは違う空気を持つ人の助言に皆、賛成なんだろう。各々がモリなどを持って攻撃を開始しようとしていた。
……でも、遅いよ。
「な、なにー!」
「うわー!!」
「全員!どこでも良いからつかまれ!船から振り落とされるぞ!!!」
俺が網を壊した事により網を引っ張り上げていた船が大きく揺れていた。
俺の歯を舐めるんじゃねぇよ。こちとらスキルアップの為に岩やゴミなどを噛み砕いてきてんだよ。
この程度の網、俺の歯に掛かれば、糸蒟蒻の様なものだ。
「奴に逃げられるぞ。」
「とにかく、攻撃しろ。少しでもダメージを与えろ。」
闇雲に投げては来るが、すでに海中にいる俺にとってこの程度の攻撃をかわすのなんてわけないよ。
それにしても奴ら、銃も持って来てやがった。さっさと逃げて正解だったな。
銃弾に当たって、もし、貫通せずに体内に残った場合、摘出は不可能ずっと体内に残ると言う事はそれが原因で死ぬ可能性がある。
俺にはひっそりと死ぬなんて事は許されない。死ぬ時は劇的に死ななければならない為、銃弾に当たる=クライマックスと言う事だ。
だからできる限り銃弾には当たりたくない。
それよりも、今度は俺が罠を仕掛ける番だ。