収穫祭と世代交代
神界から全ての種族、全ての住人が集まる。
目的は収穫祭だけではなく、勿論───
世代交代を目的とした模擬戦である。
模擬戦の意味を皆は知らない。
それでも英雄神<戸河健汰>が戦いの壇上に上がるというだけで、多くの者が集まるのだ。
そんな状態を神都の頂上から眺める健汰とルドラ。
嘗てないほど穏やかな表情であった。
『なぁルドラ、ここまで色んな事があったが……俺たちよく頑張ったよな?』
『うむ。そうだな。
最初お前に召喚されたときは驚いたがな。
なんせ、用を足していた時だったのでな!』
『そうだったの!?それは悪いことをしたな!つーか、早く言えよ!!きったねーなー!』
『ハハハ。すまんすまん』
『さて、行くか』
そういうと健汰はルドラの背に乗り収穫祭の会場に舞い降りた。
その姿を確認した会場から割れんばかりの歓声が巻き起こる。
『お前、相変わらず凄い人気だな』
『そうだな……ありがたいものだよ。
なぁ、実はさぁこの話をしたあとに神界に、もう1つの界層を作ったんだよ。
そこはさぁ、昔の下界と同じように作ってあってさ、また1から色んな事が出来ると思うんだ。
楽しそうだろ?流石に俺たちが下界を旅する訳にはいかないじゃん?』
『全くお前は……どんだけの発想力を持ってるんだよ。
そこで旅しながら気兼ねなく俺たちだけの世界を作り上げるんだな。うん!いいなぁ!』
『だろ?皆で昔みたいにな!リコ&ピンも一緒に!』
『いいんですか!?是非!!』
所変わって収穫祭は大盛況。
リザードマンからは最高の水と最高峰の魚を、エルフからは最高の果物と穀物。
魔族からは最高級の肉が出され、参加した者全員がとても幸せそうに笑っていた。
『皆、楽しそうだ。俺はこれが見たかったんだ。種族関係なく皆で手を取り合い、笑顔に包まれる。これぞ真の平和だろ!ハッハッハ』
『そうだな。実に素晴らしい光景だ。あの時、お前と仲間になっていなかったら……本当に感慨深いよ』
『あれだけ種族間で争っていたのにね』
『私も救って頂きました』
『皆お前に感謝しているし、お前を最高の友だと思っている。
だが、そろそろ俺たちの時代を譲ろうじゃないか』
『ああ!そうだな!だが、その前に、だ……
越えるべき存在を越えてもらわねばな!ルドラ、会場に行くぞ』
健汰、ルドラが会場に到達すると大歓声に包まれる。
壇上ではアルテと秀光が待機していた。
健汰とルドラは思った。
まるで神と神竜の名コンビだな……と。
壇上にゆっくりと健汰とルドラが上がると会場に静寂が訪れる。
『よう!秀光、アルテ。もう、あーだこうだ言わねー。
アルテはルドラと、秀光は俺へ、全力で向かって来い!
流石にあのときのままじゃねーよな?だったら一生勝てないから消すぞ』
『会場には最強のシールド貼りOKだよ!
さぁ4人とも全力を出しちゃいな!!』
『サンキュー!!
それじゃ、これが俺のフルパワーだ!!』
その瞬間、健汰がフルパワーになる。
続いてルドラ、アルテ、秀光がフルパワーになった。
余りにも強大な力に健汰考案のシールドまでもがビリビリと震える。
『秀光……迷いがなくなったな』
ビバルは秀光の力に感心していた。
『これが武神秀光の本来の力か。
やっぱりアイツが俺たち世代の最強だよ』
紅羅真と同化してフルパワーになった秀光が健汰に仕掛ける。
とんでもないスピードの攻撃。
余りのスピードに少し健汰が焦る。
『クソ速いじゃねーか!この野郎!いいぞ!後はパワーを乗せてこい!』
アルテも素晴らしいパワーを披露している。
『最早、父と変わらぬな。だが、まだ隙が多い!』
アルテがルドラの一撃でリング外に吹っ飛ばされる。
間髪入れずルドラが追い討ちを掛けるがアルテは "それ" を読んでいた。
ルドラの顔面に全力の蹴りが入る。
思わぬ一撃にルドラは膝をついてしまう。
『あっ!しまったぁー!!チッ!!やるではないか!アルテ!
父さんの負けだ。お前にこの座を託そう』
『えー!……そんな終わり方?
秀光よ、俺は技を使わないからお前も技を使わずに来い!あ、同化は許す』
『ありがたき!!
では、秀光!全力で参ります!!』
時間にして20分くらいだろうか……
永遠に思えるような、長く濃い時間。
健汰は考えていた。現世での無駄な時間。
異世界に来ての大切な日々。楽しい友との時間。幸せな家族との日々。
本当に色々あったなぁ。黒歴史もなぁ。
あとは、コイツが引き継いでくれれば俺はもう退けるな。
もっとガツンとした攻撃をくれればなぁ。いいや、1発シバいとくか。
健汰が拳に力を入れたとき、健汰は膝をついていた……
『なに!?
見えなかった……』
実はこのタイミングを待っていた秀光は健汰が拳に力を込める瞬間を見逃さず、顎に最速の拳を振り抜いたのだ。
前回負けたときはパワーもスピードも耐久力も全てにおいて敵わなかった。
この1000年、スピードと瞬間の破壊力を磨いてきた秀光の一撃は総合能力では敵わなくても、英雄神よりも速く重い一撃であったのだ。
『よっしゃーー!!!!』
『ハッハッハッ!負けちゃったな!パパ敗北です!
強くなったじゃないか秀光!』
会場は英雄神が敗北したことにより静寂に包まれる。
しかし、次に健汰が発した言葉に会場が最高潮に盛り上がる事になるのだ。
『私、7代目神の戸河健汰より重要な報告がある!
英雄神、戸河健汰は神の座を全権、戸河秀光に譲渡する。
これより戸河秀光は8代目神、武神を名乗れ!』
その時、神界、下界問わず全員の魂に8代目神の名が刻まれた。
『ほれ、秀光。挨拶しなさい』
『皆さんの魂に刻まれたと思いますが、私が8代目神こと戸河秀光です。これよりは私が皆を導きます!
早速ではありますが、私の最大の友であり側近を紹介します。
神竜、アルテ!神リザード、ビバル!そして神刀紅羅真!
皆さんの期待と先代達の期待を裏切らぬように邁進して参ります!』
『おおーー!!!!
8代目!!キター!!武神万歳!!』
ここに新たな神が誕生する。
8代目神<戸河秀光>通称〈武神〉
何はともあれ、父であり7代目<戸河健汰>は、ようやく隠居出来たのである。
『さっそくではあるが秀光、後は任せたよ』
『父上!!待ってください!!まだ神として教えて頂きたい事が……』
『秀光!!今はお前が神だよ。
それに、俺の近くで神の姿、神の仕事を見て来たはずだ。
そんなお前に俺は全てを預けた。意味は分かるな?』
『承知しました。ですが……!』
健汰は笑顔で頭を指した。
『秀光!!困ったときは<通信>だ』
『承知しました』
『では、収穫祭と譲位式は終わりだ。皆さんも帰宅されてください。さて、俺たちも戻るか』
全員で神都に帰宅すると健汰が語りかけるように口を開いた。
『さてさて、これでようやく俺の任務も終了かな?さっきも言ったが秀光、後は任せたよ。俺たち先代は新たに作った別の神界層に移住する。
のーんびり暮らす予定だから止めてくれるな。新世代に、この界層全部と下界の事も任せるから頼むぞ。何かあれば教えたテレポートで聞きに来い。レイン何か言ってあげな』
『……秀光、頑張るのよ。
お母さん達は目の前から居なくなるけど……近くには居るんだからね。会いに来てよね』
『母さん、ありがとう。必ず会いに行くよ』
『アルテ、神竜の役目、確りと果たすのだぞ。秀光もビバルもケルベロスもパン子もいるんだ。
仲間に頼り仲間に頼られる存在になれ!
お前なら出来ると父さん信じてるぞ』
『父上……頑張ります。時には会いに行きますね』
『ビバル、頑張るのだぞ。体に気を付けるのだぞ』
『承知しました父上!父上こそ、お元気で!』
『ケル、秀光を確りと支えなさい。泣き言なんて言っちゃダメだよ』
『分かりました。母上、父上、お元気で。たまには会いに行きますね』
『父上……寂しいです。でもパン子も頑張ります!』
『うん。パパも寂しいよ。
でも兄弟たちも居るから皆で協力して秀光様を支えなさい』
『健汰様!私は秀光様の所に残りたいと思います』
『ライアルさん!
父さんに恩義があるから行かれると思っていました』
『だからこそです。恩義があるから、今度は託された新しき神に仕える。それが私の務めと考えております。
秀光様……これからはお側でお仕えいたします』
《秀光》
『ライアル……感謝する』
ゲイトも秀光に賛同した。
『俺も残るよ』
『わしとスレイも残ろうかな。秀光の心の支えも必要だろう』
『わかった。ありがとな。じゃー俺たちは行くよ。元気でな皆、たまには遊びに来いよ!』
『ライアル、ゲイト、じぃちゃん……
ありがとう。私も皆さんの期待を裏切らない神になります。7代目……本当にお疲れさまでした』
ルドラが勢い良く翼を広げ、健汰に声をかける。
『乗れ!健汰!』
健汰はルドラの背に勢い良く乗り新たな世界に旅立っていった。
一部の者は残り一部の者は着いてきた。
テレポートに移動した別界層。
そこは何者にも荒らされてない自然豊かな土地!
『まぁ素敵な場所!』
『本当に美しい場所ね!』
『懐かしいなぁ!昔の風景だ!』
『いいだろ?俺とコッペで作ったんだぞ!
全部天然物だよ!やっと、皆とまた平等に会話が出来るなぁ……』
『俺たちは、いつもと変わらんぞ。だが、一先ず健汰……お疲れ様だ!』
『お疲れ健汰!』
『お疲れー!』
『また、いーっぱい遊ぼうねー!』
『お疲れ様でした。あなた』
『ああ……ありがとうな』
………………
…………
……
300年後
『父上ー!!
この方針なんですけど、これはどうしたらいいんですか!?』
『またかよ!お前10年に1度のペースで来てるから、軽く30回は来てるぞ!
ライアル、ゲイト、じぃちゃんが居るだろーが!』
『あ、いや、そうなんですが、最終確認を……』
『いや、その最終確認はお前の仕事だから!』
『あらあら、秀光、甘えが過ぎるようですね……そろそろ双方にお仕置きが必要ですか?』
『俺、関係ないじゃん!帰りなさい!すぐ帰りなさい!雷が落ちますよ!』
『わ、分かりました!』
と、まぁこんな感じで隠居?
したのか謎な状況ではあるが、俺は隠居したのである。余生を楽しくのんびりは……叶いそうにないね……。
そんな感じで、無価値と言われた人間が異世界では絶対必須でしたの本編は一旦終了です。
【完結】
久しぶりの無価値製作はやっぱり楽しかった!
私の中の1番の自信作です!
是非1度読んでみてください!




