第5回
「ようこそ! 酒場箸休めへ!」
「おお! いいですね!」
飲食店へと入った四人、空いている席に座ると、猫耳少女は自分の事を語り始める。
「三人共助けてくれてありがとう。私の名前は、センリ、センリ・ミケ」
「スイート・アネモネ、エルフよ」
「ヒューマン、ポプリ・マルヴィアです。先程はありがとうございました」
少し間を置いたところで、ポプリが口を開く。
「確か、苗字がミケ……それにその耳、もしかして、トーキョクの人ですか?」
「お、分かる? あ、後、そんなにかしこまらなくてもいいよ」
「何だよ……トーキョクって……」
「ここから、東にある島国だよ」
「そーそー、向こうの人達はこんな風に、動物の耳と尻尾が生えているんだ」
そう言って、センリは頭の耳と腰の長い尻尾を動かし見せつける。
「ていうかアンタ、いい加減その、暗黒オーラ出すの止めなさいよ」
「東……島国……なんだ唯の日本か……」
「聞いてる?」
日本という聞かないワードに食いついたのは、やはりポプリだった。
「日本? 気になるね、教えて!」
「文明の進んだ国だよ……」
「いや、それだけじゃあ……」
「……もういいだろ」
そう言って、席を立とうとするが、ポプリが止める。
「待って待って! すぐに帰ろうとしないで!」
「そうだよ。私も君の力を聞きたいし」
「……はぁ」
渋々座る少年。センリは早速、質問をする。
「殴り一発で暴漢退治! その秘訣は?」
「お前らは……」
「え?」
「お前らは、瞬間移動できる奴や、無詠唱で隕石を落とす奴をどう思う?」
突然の質問に困惑する三人。
「えー……それは……」
「そんな奴、いんの?」
「えっと……確かに凄いと思う! でも、君もやっぱり……」
「だが俺は、それが出来ない。チートがありゃ、こんな所でくすぶらずに済むのに……」
「ごめん……チートって?」
「私も知らない、それにアイツさっきからそれしか言ってないし……」
スイートにこっそりと聞くセンリだったが、言っている当人以外には、その意味は分からなかった。そんな中、一人の女の子が声を掛ける。
「あのー……ご注文はお決まりでしょうか?」
「ああ! すいません! えーっとですね……」
センリとスイートが従業員の少女の相手をしている内に少年は逃げ出そうとするが再び、ポプリが止めた。
「だから待ってって! 隙あらば帰ろうとしないでって!」
その声に、二人はポプリらの方を向く。
「……俺は帰る……! 大体なんで子供が働いて……」
「そういう子だっているんだよ!」
「ここ、怪しい店だろ……!」
「いや、怪しくないよ! 初めてきたけど!」
言い争いを始めた二人を無視して、少女の方を向くと、震えていた。
「そこの二人! 私は子供じゃないです!」
少女の叫びに争いを止める二人。
「何……?」
「子供じゃない……もしかしてレプラン⁉」
「そ・う・で・す!」
「レプラン?」
「成長しても、子供のまま種族!」
「だから、子供じゃないです!」
憤りつつ続けて言う。
「とにかく、注文は受け付けました!」
「ああっすいません」
それだけ言って去ろうとしたところをセンリが止めた。
「店員さん、今日のイベは?」
「イベント……ああ、吟遊詩人さんの歌唱会ですか?」
「そう、それ」
「アンタ、好きなの?」
「そりゃそうよ! ここに来たかいがあったって思えたんだから」
「そこまで、言ってもらえると嬉しいんですが……」
「何かあったの?」
「それが……体調を崩されてしまって……今日は参加できないそうです」
「ええ⁉」
「そんな⁉」
同時に声を出すスイートとセンリ、そこへポプリが言う。
「でしたら、私達が代わりに歌います!」