第2回
異世界モノ特有のステータスも用意しておくべきか……?
「依頼は無いですね」
「嘘ォ⁉」
ギルドで依頼を受け、最低限の収入を得ようとした二人を待っていたのは、依頼0の洗礼だった。驚きの声を出す二人。
「ねぇ⁉ いつもそこにバッーって貼られているよね⁉ 害獣駆除とか豚探しに芝刈りとかさぁ! それすらないの⁉」
更に、スイートが掲示板を指差して、声を荒げる。
しかし、受付嬢は顔色一つ変えず淡々と言う。
「それすらないです」
「本当?」
「本当です」
「マジで?」
「マジです」
何故二人は、ここまで騒いでいるのにも関わらず特に何も言われないのか。
「……今更言うのも何だけどさ……」
ポプリは周りを見渡して言った。
「私達しかいない?」
「恐らく、住民の大半は現在、城で行われている行事に参加されていると思われます」
「城でなんかあった?」
首を横に振るポプリ。
「前々からそれらを伝える広告が貼られていたと思われますが?」
「あ、ごめん、見てないわ。教えてサヨ?」
両手を合わせ上目遣いで頼む。
「はぁ……」
長い髪をリボンで一つ結びにしている受付嬢、もといサヨは呆れつつも、説明を始めた。
「お二人は、近年、魔物が凶暴化しているという事はご存知ですか?」
「うん」
「確か、古代の魔王が復活したーとか、神々の怒りだーとか聞くけど、どれも確信がないんだよね」
「説明は不要ですね。では、ここからが広告の内容です」
サヨは一呼吸置き、口を開く。
「国王は、国中の魔導士、賢者を集結させ異世界からの使者を呼び出す儀式を行うと言われています」
「異世界って……大丈夫なの?」
「これは、私が聞いた程度の話なのですが、何でも我々を軽く凌駕する力を持っているそうです」
「皆、それを見に行ったって事?」
「恐らく」
「良し決まり! 異世界の人に会いに行こう!」
「さんせ!」
ポプリは大きく口を開き、スイートもまたそれに賛同した。
その後、ポプリは彼女に耳打ちする。
「売れそうな物とか譲ってもらえないかな?」
「それね」
「お話の最中ですがいいでしょうか?」
「何?」
二人が同時に声を出す。
「この時間ですと、召喚の儀式はもう終わってますよ。異世界の方にお会いになるのでしたら、急いだほうが良いのでは?」
ギルドを勢い良く飛び出した二人は、急いで城へ向かって走った。
人混みを潜り抜け、曲がり角を曲がった。
しかし、その先で少女とぶつかってしまう。
「いだっ⁉」
「きゃっ!」
「ちょっ! 大丈夫⁉」
転んだポプリに手を伸ばすスイート。ぶつかった天使の様な白い羽を持つ少女の方は、後ろにいる悪魔を思わせる二本のツノと黒髪にウェーブがかったショートヘアのメイド服少女を見るが、反応していないのを見るとそのまま自力で立った。
「申し訳ございません。お怪我はありませんか?」
ウェーブがかった金色の髪と胸を揺らして近づく少女。
「いっいえ! 私の方こそごめんなさい!」
急いで立ち上がるポプリ。
「あの、その私達……」
「急いでいるのでしょう? 構いませんよ」
「あ、ありがとうございます!」
「あ、あたしからも、ホントすいません!」
二人が頭を下げつつ走り去っていったの見ると少女は頬を小さく膨らませ、言った。
「手ぐらい伸ばしてよ……」
悪魔の少女は、睨みつけながら返す。
「メンドクサイ奴……」