バンさんのお店へ行く
次の日、バンさんに会うため街へ向かった。
カランコロン
「おはようございます」
お店のドアを開けるとバンさんは朝の準備が終わり一息ついている所だった。相変わらずパンのいい匂いがする。私に気がついたバンさんは作業場から出てきた。
「すまなかったな急に呼び出して」
「いいえ、あ、パンありがとうございました! 美味しかったです」
お礼を言ったのにすごく微妙な顔でデコピンされた。
「いたっ! なんですか急に」
おでこを抑えながら聞くと礼を言うのはこっちの方だと言われた。なんの事か分からず首を傾げると、どうやらペンダントの力で作った野菜とさくらんぼの事だった。
「野菜の作り方かえたのか? それとも違う品種なのか?どちらにしろ、今までも美味かったがそれとは全く違う美味さだ。ちょっとした評判になってな客も増えたよ」
おぉ、それは良かった。
「それでだな……」
珍しく歯切れの悪いバンさんを見ながら話の続きを待っていると、少し申し訳なさそうに話し出した。
「今日来てもらったのはその事なんだ。嫁さんの兄が王都で商人をしているんだが、リゼのさくらんぼを気に入って店に置きたいと言ってるんだ」
どうやら先日野菜を送った日に、仕事で街に来ていたお兄さんがバンさんの家に来たそうだ。
バンさんの奥さんが美味しいからとさくらんぼを食べさせたら感動したと言って、直ぐにうちに行こうとしていたと。
バンさんは先ずは自分が先に話をしてみるからとその日は帰ってもらったそうだ。
「悪い人じゃないんだか押しが強くてな。商売の幅も広がるし話自体は良いんだが、乗り気でなければ断っておく。俺の頼みだからと無理はしなくていいぞ」
さくらんぼは沢山あるし、王都のお店に置いてもらえるならジェフさん達にも食べてもらえるはずだ。断る理由もない。
「ぜひお願いしたいです」
「そうか! 詳しい話は本人からあるから、また3日後このくらいの時間に店に来てもらってもいいか? 向こうにも話を付けておくから。準備も必要だろ? 大丈夫だと言ったら今日にでも来そうだ」
バンさんはホッとした後に苦笑いしている。
最近の野菜パンの人気を改めて聞いた後、バンさんに王都の配達の仕方を聞いた。
「商業ギルドに持って行けば直ぐに届けてもらえるが登録しないと使えないからなぁ。だいたい2〜3日で届くが」
商業ギルドってなんだろう。荷台屋のおじさんの日数よりもだいぶ短い時間で行くみたいだ。
「バンさん、商業ギルドってなんですか? 荷台屋さんよりだいぶ早く着くんですね」
バンさんは、あぁ田舎育ちだったなと言うと簡単に説明してくれた。
「商業ギルドは商売やってるやつらの元締めみたいなもんだな。ギルドに登録しなけりゃその街に店を出せないんだ。リゼみたいに森から少しばかり卸してるだけなら入らなくてもいいがな」
「そうなんですね」
なるほどなるほど。
「配達が早いのは王都専用の配達者がいるからな。荷台屋は途中の村や町にもよったりする分遅くなるんだよ。何か運びたいのがあるならギルドに行ってみるといい、俺の名前を言えば一度位は融通してくれるだろ。一筆書くからちょっと待ってくれ。今からなら昼の便に間に合うはずだ」
バンさんに手紙をもらい場所を聞いてお礼を言うと早速ギルドへ向かう事にした。