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もちろんです

「フム、久しぶりに賑やかな食事だったわい。それにしてもお主の作るご飯はうまいな」


「きゅ! きゅ!」


 フェンちゃんもモフモフも満足してくれたようだ。


「ふふっ、よかった。お茶の用意してくるね。ミルクと紅茶どっちがいい?」


「ワシとこやつはミルクで頼む」


「クラウスさんとアルヴィンさんは紅茶で大丈夫ですか?」


「あぁ、悪いな」「はい、ありがとうございます」


「クレルはどっちがいい?」


「私も手伝うわ」


 そっかそっか、ありがたい。クレルと一緒にキッチンへ行ってお湯を沸かし、戸棚から茶葉を取り出したところで手が止まった。


「どうしたの?」


「んー、茶葉がね。今までは気にした事なかったけどクラウスさんの家で飲んだ紅茶がすごく美味しかったから2人に出して大丈夫かなと思って」


「あの2人がそんな事にケチつけるとは思えないけど、確かにお屋敷で飲んだ紅茶は美味しかったわね」


 そうなんだよね、クラウスさんとアルヴィンさんが何か言うとは思えないのだけれど少し考えてしまったのだ。かく言う私もメアリアさんのお茶を飲んだ後では美味しくて紅茶に対しての考えが変わったりもした。


「これしかないし考えてもしょうがないよね」


 街へ行ったときにお茶屋さん行ってみよう。


「気になるなら水を力で出してそれを使ってみたらどうかしら。不純物の入っていない水なら味もよくなるんじゃないかしら?」


 なるほど、試しにやってみよう。もったいないので沸かしていたお湯はカップとポットを温める為に使おう。

 力を使った水を火にかけてポットが温まったところで中のお湯を捨てて茶葉を入れる。ポットに沸騰したお湯を入れ蓋をして少し蒸らす。んー、いつもより香りが強い気がする。


「いい香りね」


「うん、飲んでみよう」


 一口分の紅茶をカップに入れてクレルに渡して自分でも飲んでみる。


「「美味しい!」」


 いつもと味が全然違う。味はクラウスさんの屋敷で飲んだ紅茶が美味しいが、力を使った水にはまろやかさがある。


「ホッとする味ね。ますますリゼから離れられそうにないわ」


「大げさだなぁ〜、クレルも紅茶でいいんだよね?」


「ええ。私はミルクを用意するわね。あら、そろそろミルクも無くなるわよ」


 フェンちゃんとモフモフの分でミルクはちょうどなくなった。畑で作っているもの以外は、王都に行く前に買った分だから買い足さないといけない物が結構ある。


「明日、街に買い出しに行かないとね。よし、お茶の準備も出来たし持っていこう」



 フェンちゃんとモフモフにミルクを出して、クレルがテーブルの上に紅茶を置いていく。

 外は柔らかな風が吹いていて、太陽の光は花に降りそそぎ鮮やかさを一層際立たせている。こんなふうにゆっくりとした時間の中で紅茶を飲みながらみんなで過ごすっていいなぁ。




「うまいな」


 紅茶はクラウスさんとアルヴィンさんにも好評だった。とくに紅茶が好きなアルヴィンさんは、茶葉について知りたいと言ったので街で買ったお徳用で水は力で出したものだと説明したら絶句していた。


「茶葉が変ったら一体どんな紅茶になるんだ……」


「気になるならリゼに頼んでみたらいい。無理な頼みでもないし紅茶なら入れてくれるだろう」


「そうですね」


 紅茶を入れるだけならいつでも大丈夫だ。ハッとしたアルヴィンさんと目が合うが、期待に満ちた目がいつものイメージを打ち砕いていく。ぐはっ……アルヴィンさんがかわいい。ギャップ萌えとはこれの事か!


「お願いしても?」


 もちろんです。


「はい、街に行く以外は森にいるのでいつでも大丈夫です」


 イエス以外の選択肢などない。


「良かったな、俺も茶葉の用意をするか」


 え? 


「クラウスには何を言っても無駄よ。紅茶の件がなくても森には来るでしょうし。さ、片付けましょう」


 クラウスさんは、何を言っても無駄だと言うクレルの言葉をあっさり肯定した。


「まぁ、そうだな。(ここ)は気持ちがいいからな。いっそのこと執務室の扉に転移陣をつけて森に飛ばすか。山ほどある執務もここならはかどると思わないか?」


「……何を言ってるんですか。王宮でも十分にできるでしょう。その山ほどある書類も待ってますし、そろそろ仕事に戻りましょう」


「アルヴィン、おまえ今すこし迷っただろう」


 ニヤッと笑うクラウスさんを囲むように氷柱(つらら)のような氷の塊がドドドドっと落ちてきた。


「どわっ!!」


「クラウス様、行きますよ。リゼさん、クレルさんご馳走さまでした。それではまた」


「おい、待て!」とジタバタしているクラウスさんの首根っこを掴んで、爽やかにお礼を言うとアルヴィンさんは水色の粒子を残して消えていった。


「ほぅ、あの黒いのなかなか綺麗な魔力の使い方をするの。くわぁぁぁ、腹いっぱいになったら眠くなったわい」


 そう言ってゆっくりと木陰まで行きゴロンと横になったフェンちゃんにモフモフもくっついて丸まるとスヤスヤと眠りはじめた。うーむ、すっかり親子のようだ。


 静かになった森にあちこちから小鳥の鳴き声がチュンチュンと聞こえる。



「あ! クラウスさんに野菜渡すの忘れた」


「大丈夫よ、クラウスの事だもの夜にでも取りに来るでしょ。……夕飯も食べていくと思うわよ。片付けも終わったし、私も少し休むわね」



 クレルの言うとおり、仕事が終わったクラウスさんは「野菜を取りに来た」と森にやってきてアルヴィンさんの愚痴を言いながら夕飯も食べて帰った。


 森の野菜はライスさんにとても気に入ってもらえたので、お屋敷と正式に契約する事になった。

 クラウスさんが毎日自分で運搬すると言っていたのをアルヴィンさんが聞きつけて、クラウスさんのお屋敷の厨房と森の倉庫の一角に小さな転移陣を設置してくれた。


 転移陣に野菜を置くと自動で運んでくれる優れものだ。ちなみにこの転移陣は一方通行で、森から屋敷の厨房にしか送れないようになっている。人の移動もできないらしい。


 クラウスさんはブツブツ言っていたが、上司が毎日野菜を運んでいては仕事にならないだろう。


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