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これからよろしくね

「ところで、あなた達の後ろにいる猫ちゃんは一体どうしたのかしら?」


 そうだ、モフモフの事を聞かないと。

 スプレンドーレさんに魔術練習で木に魔力を流したら、その木が聖樹に変わって中からモフモフが出てきた事を説明した。


「聖獣だと思うのだけど聖属性に緑の魔力も混ざってるみたいなの。だからお母様にみてもらいたくて」


「きゅっ、きゅっ」


 モフモフは日向でゴロンと寝返りをうっては気持ち良さそうにしている。


「そうねぇ、確かに聖獣になってるみたいだわ。詳しくはフェンちゃんが聞いてくれるみたい」


「「フェンちゃん??」」


「うふふ、フェンリルの名前よ。かわいいでしょ? さっきからあの猫ちゃんが気になってたみたい」


 スプレンドーレさんのネーミングセンスよ……。

 スプレンドーレさんが合図をするとフェンちゃんはモフモフに近づいていった。


 大精霊ともなると動物と話せるのかぁ。うーん、フェンリルはそもそも動物なのかな? 謎だがどちらにしても羨ましい。私もモフモフと話せたらもっと楽しいだろうなー。

 フェンちゃんはモフモフに近づくとジッと目を見ている。

 モフモフも怖がることなく見つめ返していたけれど、しばらくするとゴロゴロと喉をならしてフェンちゃんにすり寄っていた。


「すごいね、怖がるんじゃないかって心配したけど懐いちゃったね」


 フェンちゃんはスプレンドーレさんの近くに行くとスッと顔を上げた。


『木の上で昼寝しておったら急に光に包まれて魔力が使えるようになったと言っておる。この者たちの話を聞く限り若い聖樹に大量の魔力が流れたことで成木となり、近くにいたこやつが巻き添えをくって聖獣化したのじゃろう』


「聖樹とリゼさんの魔力が猫ちゃんにも流れ込んでしまったのね」


 うわぁーー! フェンちゃんがしゃべった!!!


「ク、クレル」


「リゼ落ちついて、フェンリルはとても聡明なの。それよりも問題はモフモフが初めから聖獣じゃなかったってことよ」


「つまり……?」


『お主の魔力でただの猫が聖獣になったのじゃ。聖獣は良質な魔力を好む、幸いお主は魔力の量も質もいいようじゃ責任を持って面倒をみるがいい』


「きゅう、きゅう」


 なんて事だ、まさか私のせいだったなんて。足元にすり寄ってきたモフモフを抱き上げた。


「モフモフ、巻き込んじゃってごめんね」


『そう気にやむ事もない。元々親と逸れ独り身だったようじゃ、偶然が重なったとはいえ優しくしてくれたお主を気に入っておる。たまに魔力を与えれば良いだけじゃ、さほど難しい事もあるまいて。ちなみにワシも良質な魔力は好物じゃ』


 ん? ワシも??


「うふふ、フェンちゃんこの畑に満ちているリゼさんの魔力に誘われて山から下りてきたのよ」


『うむ、日に日に強くお主の魔力が山まで来るので気になっておったのじゃ。すると数日前から急に薄まったので心配になって来てみれば光の大精霊がおるではないか。びっくりしたわい』


「それからフェンちゃんもいろいろと畑仕事を手伝ってくれたのよ」


 フェンちゃんも畑仕事をしてたのか。


『なんのなんの、(ここ)は気持ちがいいし畑の食べ物は美味い、他の場所ではワシはもう満足できん。数百年生きておるが美味すぎてびっくりしたわい。これからも手伝うぞ、ワッハッハッハ』


 これは……フェンちゃんもこの森に住むつもりだ。


「ク、クレル……」


「フェンリルが決めたのなら私たちはどうしようもないわ。モフモフも理由が理由だしクラウスに説明して面倒みるしかないわね」


 クレルが「私の方がこの森の先輩なんだからきっちり森のルールは守ってもらうわよ!」とモフモフに言っているがルールを作った覚えはない。

 間違いなくクッキーのせいだろう。クールプリティガールなクレルがここまで根に持つとは食べ物の恨みおそるべし。クレルの先輩宣言にモフモフがたじろぎ、フェンちゃんは『ルールがあるのか!』と真面目に驚いている。なんだか、ふふっ賑やかになりそうだな。


「うん、そうだね。モフモフ、フェンちゃんこれからよろしくね!」


「きゅ、きゅ!」


『うむ、よろしく頼む。ところで先ほどから甘い匂いがするがそれはなんじゃ?』


 フェンちゃんが向けた視線の先にはライスさんに用意してもらったパンケーキの材料が入った箱があった。


「あ! スプレンドーレさん、皆さんにお礼のパンケーキをご馳走したいんですが今日大丈夫ですか?」


「ええ! もちろんよ。皆とても楽しみにしていたの喜ぶわ」


「じゃあ早速準備しますね! フェンちゃんも楽しみにしててね」


『うむ、何かわからんが了承した。ワシらはしばらく遊んでおる』


 フェンちゃんの左右にパタパタと動く尻尾にモフモフがじゃれついている。尻尾が大きいので飛びつくたびにモフモフはコテンコテンと転がっているけど楽しそうだ。


「私は皆に知らせてきます。テーブルの準備などは任せてください」


「はい、お願いします。1時間後には始められると思います」



 荷物はクレルの力で家の中に運んでもらい、早速パンケーキの材料をテーブルの上に出してみる。


「たくさんあるわね」


「うん、材料はあるから里のみんなの分も頑張って作るわ。ライスさんに砂糖ももらったから前より甘いパンケーキができるよ」


「早速つくりましょう!」


 目をキラキラとさせたクレルに、フルーツのカットをお願いして私は生地を作っていく。


 卵黄にミルクとふるった薄力粉とベーキングパウダーを合わせて混ぜる、次に別の容器に冷やした卵白を入れ砂糖を数回に分けながらずっしりと重くなるまでこちらも混ぜる。最初に作ったものと混ぜ合わせて生地は完成! 今日はたくさん作るので、この作業を何度か繰り返す。

 ベーキングパウダーとは王都のシェフの間で流行り始めているものらしい。パンケーキを作ると言った時に、ライスさんからフワフワになるからと少し分けもらったのだ。


 さて、あとは焼くだけだからトッピングの生クリームとアルヴィンさんが甘いのが苦手だった時のために甘くないパンケーキも作っておこう。

 添えるのは厚切りベーコンとふわふわ卵に畑でとれた野菜のサラダとオニオンドレッシングにしよう。

 そら豆もたくさんあったから冷製グリーンスープも作ろうかな。


 外ではスプレンドーレさんと精霊たちに混ざって、クラウスさんとアルヴィンさんの声も聞こえる。

 どうやらテーブルの準備を手伝ってくれているようだ。


「リゼ、フルーツ切り終わったわ」


「ありがとう。よし焼いていくよー!」

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