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クレルと私の素朴な疑問

 厨房に行くと、ライスさんが朝食の片付けをしていた。パンケーキに使うフルーツとクリームが欲しいと相談すると、毎日業者が来るようで一緒に頼んでもらう事にした。


 代金は少額でもあり、クラウスさんの客人でもあるのでもらえないとやんわり断られた。お風呂の件もあるし、私ばかり得するような事は気がひけるので、畑の作物と交換という事にしてもらった。

 元々、屋敷で使えるかライスさんが試食するために渡す予定だった野菜と果物だ。試食の作物にも料金を支払うと、クラウスさんが言ってたのでちょうどいい。

 ライスさんには、美味しいご飯をたくさん作ってもらったので、作物はたくさん渡そうとこっそり決めた。それでもライスさんは渋って、いくつかお菓子のレシピまで教えてもらった。わぁーい! 


 明日には届くから、また同じくらいの時間においでとお土産にクッキーまでもらった。ライスさんに渡す野菜はとびきり美味しいのを作るぞーー! 気遣いのシェフ・ライスさんに渡す作物の量が心の中でまた増えた。


 ルンルンと部屋に戻る途中、食事をした部屋ではクレルとフレッドさんはまだ話していた。私に気づくとフレッドさんが「長話してしまったね」と席を立って、私の肩をポンポンとたたくと部屋を出て行った。


「おかえりなさい、私たちも部屋にもどりましょう」


「うん。あ、ライスさんがフルーツとクリーム用意してくれるって。お菓子のレシピも教えてもらったんだよ、森に帰ったら作るから楽しみにしててね」


「ええ、楽しみだわ」


 この時は、クレルとフレッドさんの気遣わしげな表情に気づかなかった。



 部屋に戻るとクレルが、午後から魔術の練習をしようと言ってきた。


「森に帰ってからじゃなかったの?」


 私にとっては魔術練習は楽しみなので、今からでも大歓迎だ。クレルに言われた瞑想も毎日続けている。


「フレッドさんが教えたいそうよ。たぶんリゼの魔法が見たいだけなんだと思うけどね」


 思い出しながら笑うクレルは、フレッドさんとだいぶ打ち解けたようだ。ここで、前からあった疑問を聞いてみた。


「クレルは、人間が嫌いじゃないの?」


 精霊を人間が捕まえていた歴史を考えると、好ましく思わないのではないかと疑問だった。


「最初に会った時に、傷を負ってペンダントに隠れていたって話したの覚えている?」


「うん」


 忘 クレルと出会うきっかけになった出来事だ、覚えている。


「私はまだ生まれて日も浅くて、未熟だったのね。お母様にプレゼントする花を摘んでいる時に、魔物の気配に気付けずに怪我をしてしまったの。必死に逃げ出して、リゼが今持っているペンダントに隠れたわ」


 私はぎゅっとペンダントを握り締めていた。


「ペンダントの中にいる間、大半は眠っていたの。たまに起きて外の様子を伺っていたけれど、持ち主の女性はたくさんの草花を育てていて、その場所はすごく心地よかったわ」


「おばあちゃんだよね」


「そう、酷い歴史もあったけれど私は人間に助けられたわ。偶然だと思っていたけど、リゼのお祖母様が魔術師長だったと聞いて、魔力を失くしていても私の存在に気付いてたんじゃないかと思ったの」


「え?」


「リゼのお祖母様が育てていた草花は、精霊が大好きなものばかりだったんだもの」


 草花が、たとえ偶然だったとしても私はそう思いたい。おばあちゃんが、私とクレルを結びつけてくれたのだから。


「精霊に害をなすものは人間でも魔物でも好きではないわ。だけど、助けてくれた人間もいるもの。私は人間だからという理由で嫌いにはならないわ。自分で見て決める。納得いく答えだったかしら?」


 いたずらっ子みたいに笑うクレルに、私も笑いながら「うん」と返事を返す。


「だけど精霊は人間を警戒してるし、人間を嫌いな精霊はたくさんいるわ。私とリゼが変わってるのは確かだもの。リゼは特別精霊に好かれやすい体質だから、お姉様たちも姿を現わしてるのよ」


「そうなの?」


「加護持ちに警戒が薄れるのもあるけれど、とにかく緑の魔力は精霊に心地いいのよね。嫌うには無理があるわ」


 素晴らしい力を授けてくれて神さまありがとうございます!!


「ところで、私も質問があるのだけれど」


 ん? クレルから質問って珍しいな。なんだかお互いの事を知っていくって嬉しい。


「なに? 何でも答えるよ!」


「結局リゼって、アルヴィンの事好きなの?」

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