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クレルとクラウスさんの両親

 部屋に戻るとベッドに倒れ込んだ。


「つかれた〜」


 クラウスさんの両親は、貴族だからって偉ぶってもなくいい人だった。ただ、貴族というだけで身構えて疲れてしまう。


「おつかれさま」


 クレルが、ふわっとペンダントから出てきた。


「クレルってば、ずるいよー。隠れちゃうんだもん」


「悪かったわ、だけど私がいたら余計な騒ぎになってしまうもの」


 そう、それはわかっている。ただの愚痴なのだ。

 メアリアさんやお屋敷の使用人もクレルが精霊だとは思っていない。クラウスさんのお客さまなので何も聞かれないが、フレッドさんとケイラさんはそんな訳にはいかないだろう。だけど、明日はどうするんだろう。ライスさんもクレルの食事は用意するはずだ。


「クレルの事は、クラウスさんの両親にも秘密にするのかな?」


「どうかしら? 精霊(わたし)がいるって気付いている気もするわ。聞きたいけれど、我慢しているってところかしら?」


 流石は元宮廷魔術師ってことなのかな?


「クレルは姿を見せても平気なの?」


「あまり進んで姿を見せる気も無いけれど、バレているのなら隠す気もないかしら。ペンダントの中から見てたけど、嫌な雰囲気もしなかったし精霊を大事にしているのは間違いなさそうだったから」


 たしかに、フレッドさんとケイラさんがクレル(精霊)に何かするとは思えない。むしろ、クレル溺愛のクラウスさんと同じようなタイプだろう。


「そうだ、クレルはお腹すいてない?」


「平気よ、リゼと暮らし初めてから毎日食べてるけど、大気から魔力さえ取り込んでたら問題ないわ。それにクッキーも食べたから」


「え、そうなの? もしかして無理して食べてた??」


 甘いのは好んで食べてると思うけど、普通の食事は私に合わせてくれてたら申し訳ない。


「まさか、今まで食べてこなかったのを後悔してるくらいだわ。リゼの料理は本当に大好きなの」


 おぉっ、良かった。一安心だ。そろそろ森に帰りたいなぁ。精霊のお姉さんたちに任せてる畑も気になるし。

 ワイバーンの襲撃で、王都の観光も出来なそうだ。色んなお店見たかったんだけどなぁ……お姉さん達へのお礼のパンケーキに乗せるフルーツやクリームはどうしても欲しい。買う方法がないか、明日クラウスさんに聞いてみよう。



「そろそろ森に帰らないとね」


「そうね、明日クラウスにいつ帰れるのか聞いてみましょう」




 次の日の朝、クレルは普通に朝食の席に着いた。

 明らかにフレッドさんとケイラさんは、クレルを見てソワソワしている。見ているこちらが緊張しそうだ。

 意を決したフレッドさんが部屋にいる使用人を退出させ立ち上がると、2人はクレルの前で貴族の礼をとった。


「お初にお目にかかります。オルドリッジ家当主のフレッド・オルドリッジと妻のケイラでございます。もしや、リゼ殿に加護を与えられた精霊様では?」


 クレルの前で膝を折る2人を目にして、改めて精霊の存在のすごさを感じた。……私って本当に運が良かったんだなぁ。


「えぇ、そうよ。そんなに畏まらなくて平気よ、私もクラウスにはお世話になっているから」


 クレルの返事を聞いた2人は、昨日以上に目をキラキラさせいた。逆にクラウスさんは「昨日の苦労は一体……」と嘆いていた。どうやら、昨夜夕食の後にフレッドさんから、精霊も屋敷にいるのではないかとだいぶ詰問されていたらしい。

 国の秘密事項なので、答えられないと言ってかわしていたけれど、あまりにしつこいので「そんなに気になるのでしたら、ご自分で確認してください」と答えたようだ。

 とはいえ、万が一クレルが姿を現してもクレルに直接聞くことは無いだろうし、クレルも違うと答えるだろと高を括っていたが、あっさり予感が外れて今嘆いている。こんな予感は当たらないんだなぁと、クラウスさんを見ていると何か感じたのか、ほっぺをつねられた。

 ……勝手に思考を読むのも、毎回つねるのもやめてほしい。


「まぁ、クラウス!! 女性になんて事をするの。リゼさん、ごめんなさいね。大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


 頬を軽くさすって答えるが、痛いですとは流石に言えない。


「全く、そんな風にだから未だに独身なのだ」


 2人に責められ、バツが悪くなったクラウスさんは退室していたメアリアさんを呼び食事の準備をさせた。


 初めは緊張していたフレッドさんとケイラさんも、一緒に食事をするうちに、かなりクレルと打ち解けたようだ。おそるべき貴族の社交スキル。


 食事も終わり、皆で紅茶を飲んでいるとケイラさんからポーションの化粧水がすごく良かったので出来ればまた譲って欲しいとお願いされた。


「今は手元にないので、森に帰ってからになりますが大丈夫ですか?」


「えぇ、お願いするのだものもちろんよ。お代は、今日渡しておいてもいいかしら?」


 あげるつもりでいたので、化粧水に値段なんて考えてなかった。私とクレルの分と毎日作っているので手間でも無いし。


「すぐ作れるものですから、お代は結構です」


 私が断るとケイラさんは一瞬驚いた後、少し怒った顔をした。


「リゼさん、自分の力を安売りしてはいけないわ。精霊の加護もあなたの力も素晴らしいものなんだから」


 クレルも一緒に「リゼは自分の価値を知らな過ぎるのよね」と言っている。

 そう言われても困ってしまう。値段……どうしよう。

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