契約の印
契約したからといって特別な変化は何も感じない、クレルの方を見ると先程のデレは消え去り左手を見ていた。
「何見てるの?」
クレルの左手を見ると、小指の付け根を囲むように文字が見える。文字の指輪みたい。
うーん、おばあちゃんが持っていた本の文字に似ている気がするけど、所々違うようで読めない。
おばあちゃんの本なら読めるんだけどな。
「私とリゼの契約の印よ。理由はわからないけれど人によって印も場所も変わるのよね。リゼも体のどこかに印が現れてるはずよ」
わー! どこだろー! ちょっと嬉しいかも。
しかし、あちこち見てみるが印は無かった。えぇ、なんでだ……。
「印が現れないって事はないんだよね?」
「お風呂に入る時にでも探したら見つかると思うわよ。必ずあるから」
そうしよう。うなずいてもう一度クレルの小指をみる。
「ねぇ、クレルの印は文字に見えるけどなんて書いてあるの?」
「精霊文字で "時を共に" って書いてあるわね」
わぁ、結婚の誓いみたい。精霊文字だったんだね。
「なんだかロマンチックだね」
「ふふっ、そうね。精霊と1番最初に契約したのが、隣国ネラディオスの建国の王サミュエルなの。あまり知られていないけれど、彼は契約した精霊と結婚したのよ」
――――えっ!!
人間と精霊って結婚出来るの?
それ、クラウスさん知ってるのかな。知ってたら本気でクレルの事を狙ってきそうだ……。
「じゃあ、ネラディオスの王族は精霊に近いの?」
「サミュエルと精霊が結婚したのは600年も前だから、今の王族はほとんど普通の人間と変わらないわ。それでも100年に1度位は強い魔力持ちが生まれるみたいね」
ほーう。もしかしたら、ネラディオスが聖都って呼ばれるのは精霊と関わりがあったからなのかな。
「あ、そう言えば契約の時に言ってた"始祖の力を纏いし幼きもの"ってクレルの事なの?」
聞いた瞬間クレルの目が泳いだ。手をバタバタさせてあきらかに挙動不審だ。
なんだろう……今日は珍しクレルが沢山見れる。いい日だ!
クレルはふぅーっと息を吐くと諦めたのか、隠す気は無かったんだけど……と話はじめた。
「お母様はリゼも知っての通り光の精霊なの。里の精霊はお母様の魔力から生まれたと話したけれど、私は違うのよ。お父様もいるの」
つまりクレルはお姉さんたちと違って魔力から生まれてないって事? 恥ずかしそうに話すクレルを見ながら、頷いて話をうながした。
「お父様は精霊たちの王なの」
ぶっ!!!
「クレルのお父さん精霊王なの!?」
「えぇ。お父様の力は受け継いでいるのだけれど、名乗るにはあまりにも力が足りなくて言うのも恥ずかしいのよ。だけど必ずお父様やお母様みたいに立派な精霊になってみせるわ」
精霊王と光の精霊の娘って、精霊界のプリンセスだよね。
「あの、私と契約して本当に良かったの? あまり贅沢は出来ないし、これからも畑仕事しながらのんびり暮らすよ?」
クレルは頬を膨らますと拗ねた。それはもう盛大に。
「リゼってば私の事一体どう思ってるの!? 畑仕事に不満を言った事なんて1度もないでしょ。あの緑の魔力に満ちた森と、なによりリゼが好きだって何度も言ったわよね!」
ひぃーーー、ごめんなさーーい!!
クレルに土下座する勢いで謝っていると、部屋のドアが開きお城から帰ってきたのか呆れた顔をしたクラウスさんが立っていた。
「何をやってるんだ、君は」
いつも狙ったかのようなタイミングで来るのはやめてほしいです。




