精霊との契約
王都でワイバーンの後処理にみなが追われているころ、森ではクレルが自身との契約をリゼにもちかけていた。
「契約って、加護とは違うの?」
「違うわ。リゼに渡した私の加護は、水を出したりとか生活に便利だなって感じる程度のモノなの。使いこなせれば多少の攻撃や防御にもなるけれど、精霊との契約は私自身を使えるの」
え、クレルを使うってなんだ?
「契約していたら、たとえ離れていてもすぐにリゼのそばに行けるの。リゼが狙われていると分かった以上、魔術の訓練より先に必要だと思うわ。相手が誰であれ指一本触れさせないから。私が守ってあげれる」
心配してくれるのは凄く嬉しいけど、クレルが戦う姿が全く想像できない。
「戦ったりしたらクレルが危いよ」
クレルは女の子なのだ。背だって私より10cmも低いし、身体もほっそりとしてワイバーンなんかと戦ったら風圧だけで倒れてしまいそうだもん。
いかん、いかん。そんな危険な目には合わせられない。
ん? クレルの肩がわずかに揺れたかと思うと、笑い出したぞ。ここは、笑うより「そうだね」と納得してもらうところだ。
「やだ! リゼったら! 精霊が契約持ち出したのに戦ったら危ないだなんて。……ふっふふ、初めて聞いたわ。私はリゼがおもうよりうんと強いから心配しなくても大丈夫よ」
あー面白いと言いながら、涙を手で拭っている。
「むー、そんなに笑わなくてもいいのに。クレル小さいし心配するよ」
「極端な話、私たち精霊は魔力の塊だから姿は変えれるのよ。この姿で魔力と魂が定着していて疲れるからわざわざ姿を変える精霊は少ないけど、いない事はないわ」
つまり? 見た目をムキムキにしようと思ったら出来るって事??
そ、それはダメだ。私の一言でクレルがムキムキ精霊に変わったら、私がクラウスさんに何をされるかわからない……。
そして、私もそんなクレルはイヤだ。
「クレルはそのままでいて」
私の為にもお願いします!
クレルは、また少し笑いながら話を続けた。きっと考えていた事が分かったのだろう。私ってそんなにわかりやすいのか……。
「あと一つ。加護を与えたらその人間と共にいる場合が多いと前話したけど、必ずではないの。途中で加護を打ち切る事も出来るから。でも、契約の場合はどちらかが死ぬまで破棄されることはないの。だから、精霊はよほど相手の事が気に入らないと契約なんてしないの」
なるほど、つまりクレルは私が大好きって事だな!
私だってクレルが大好きだ、クレルとずっと一緒にいれるなんて幸せでしかない。
契約、したい。
「クレル、お願いします!」
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豪華な部屋で男が1人、机を叩きながら怒りをあらわにしている。男の近くには白いローブを着た誰かが立っているが、いつもの事なのか何も言わずにその姿を見ている。
クソっ! なぜだ! なぜだ!! なぜだ!!!
先にあの娘を見つけたのは、ワシだぞ!!
これで貴族を見返せると思っていたのに!
貴族共に頭を下げながら汗水たらして王都一の商会を作り上げ、やっとの思いで男爵位を授ったのだ。
それを「爵位を金で買った」だの「品がないだの」コソコソと好き勝手いいおって!
ワシから金を借りてたのは、ほとんどが貴族ではないか!!
魔力と加護持ちの娘さえ手に入れれば、もう好き勝手は言わせんと思っていたのに。
あの宮廷魔術師め横から掻っさらいおって。今回の計画のために、魔術師にワイバーンと一体どれほどの金を使ったか!
あの娘、逃すものか。必ず手に入れてみせるぞ……。




