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はじめてのお化粧

 クレルは、服を決めると着替えて鏡の前で全身チェックをしている。

 私はどれにしようかなぁ、全部可愛い……。

 可愛すぎて似合うか正直微妙だ。鏡に映る自分を見ると、日焼けした肌に旅で痩せた体というアンバランスさだ。


 ちゃんと食べてるんだけどな……。1日1食の生活が数ヶ月続いたせいで、1年経った今でも胃が小さいままなのかな。

 あ、だからクラウスさんは私の朝食を少し多めにって言ったのかな?


「リゼ〜、決まった?」


「えっ、あ、まだ。沢山あるから悩んじゃって」


 わからない事は考えてもしょうがないか、それより服を決めなきゃ。


 あ、可愛い。服を選ぶ手を止めて1枚の服を取り出した。薄緑のスカートに白いシャツを組み合わせた服だ。シャツには、レースの襟が付いていてスカートの裾にも白い糸で葉っぱを模様した刺繍がしてある。


「リゼに似合いそうだわ」


「これにしようかな、着替えてみるね」


 初めて着る様な可愛い服にソワソワしながら、クレルに見てもらう。


「どうかな? 変じゃない?」


「素敵よ! すごく似合ってるわ」


 少し照れながら鏡を見ていると、ドアをノックする音が聞こえてきた。

「失礼します」とメアリアさんと若い女の人が入って来た。


「お二人ともお似合いですね。こちらは侍女のミヤです。手先が器用ですので、手伝いに連れてきました」


「リゼさん、クレルさんよろしくお願いします。では早速準備しましょう。リゼさんからこちらにお座りください」


 促されるままイスに座ると、ミヤさんが色々な道具をテーブルの上に置いて「リゼさんにはこの色が……」などとブツブツ言っている。

 どうやらお化粧や髪のセットをしてくれるようだ。初めてみる道具が次々と並んでいく。

 メアリアさんは、ミヤさんの紹介をすると仕事に戻っていった。


 何だかすごく良くしてもらってるよね……。今度クラウスさんにお礼をしよう。


 クレルは「私はこのままでいいわ」と言って陽のあたる場所に腰かけ、ミヤさんが私に化粧をしている姿を見ている。


 ミヤさんは、クラウスさんのお屋敷に12才の頃から働き始めて今年で8年目になるそうだ。クラウスさんの客人という事で丁寧に対応してもらっていたが、年も近いので普通に話して欲しいとお願いした。


「リゼさんの肌ってすごくキメが細かいわよね。どんなお手入れしているの?」


「自分で作ったのを使ってるの」


 ポーションとは言えないので、嘘ではない程度に伝えるとミヤさんは目を輝かせた。


「そうなの? 凄いわね、私にも譲ってもらえないかしら? もちろん代金は払うから」


 クレルの方をチラッと見ると、肩をすくめている。特に問題ないって事かな。


「じゃあ、今度クラウスさんに渡しておくね」


 ミヤさんは「えっ! 旦那様に……? 叱られないかしら」としばらく何かと戦っていたが、勝負が決まったのか顔をあげると「お願いするわ」と言った。

 しばらくそんな話をしていると、どうやらメイクも終わったようだ。


「出来たわ。目はぱっちりして、まつ毛も長いし素材もいいから化粧映えすると思ってたのよ。派手にならないように出来るだけ自然な感じにしてるけど、我ながら素晴らしいわ!」


「すごい……」


 鏡を見ると別人のようだ。ミヤさんの技術に感動していると、今度は髪をセットし始めた。希望を聞かれたが、後ろに1つに結ぶ以外した事ないのでおまかせすることにした。


「髪もサラサラね。羨ましいわ、王都でも香り付きの石鹸が流行ってるけどリゼさんも使ってるの? 爽やかないい香りね」


 香り付きの石鹸かぁ、使ってみたいな。

 髪もポーションで洗っているけど、最近は肌用と髪用の2種類を作っている。髪用には作る時にオレンジの乾燥した皮を一緒に入れている。色々試してみたけれど、オレンジの香りが1番好きだった。


「完成よ、後ろを編み込んで1つにまとめてみたの。髪飾りがあればもっと良かったんだけど」


 ちょうど完成した頃にクラウスさんが部屋にやってきた。ミヤさんは、後ろに下がると挨拶をして部屋から出ていった。


「クラウスさん、色々用意してくださってありがとうございます」


 クラウスさんは私を見て「化けたな」と言うとアルヴィンさんが屋敷に着いた事を教えてくれた。


「下で待っているから準備が終わったら来てくれ」


 クラウスさんは、それだけ知らせるとクレルのところに行き「とてもお似合いです」と言って部屋を出て行った。

 相変わらずのクレル贔屓(びいき)だ、別にいいけど。


 ジェフさん達に渡す荷物を用意していると、クレルが側にやってきた。


「リゼとっても可愛いわよ。今日は楽しんできてね。黒髪がいるから大丈夫だと思うけど、何かあったらすぐに行くから安心して」


 黒髪ってアルヴィンさんの事だよね……。

 クレルも意外と過保護のようだ。でも気持ちは嬉しいので素直に頷いておく。しかしクレルの方が心配だ、王宮で嫌な魔力を感じたと言ってたし。



「クレルも気をつけてね、謁見の間での事もあるから」


 お互い心配し合ったところで、クレルが「そろそろ行かないと黒髪が待ってるわね」と言ったので急いで部屋をでた。

 途中、クレルにはアルヴィンさんの名前をしっかりと覚えてもらった。





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