クレルと緑の魔力
食事を終えて部屋に戻るとクレルが小さなカゴの中で休んでいた。
クラウスさんが、部屋の中でもペンダントから出て休めるようにと守護の魔法をクレルにかけてくれたのだ。
「ただいま」
「おかえりなさい。リゼがいないから退屈だったわ」
やっぱりまだきついのかな……笑っているけれど、いつもより元気がない。
「緑が少ないと精霊はみんな今のクレルみたいに疲れてしまうの?」
「自然が少ないからだけじゃないのよね。謁見中に嫌な魔力を感じたの。クラウスから守護のブレスレットをもらっていて良かったわ。それでも気配を消すのにちょっと魔力を使いすぎちゃったのよね」
「クレルに気付いてたって事?」
「どうかしら、とにかく疲れたわ」
うわぁ、嫌だな。クレルにもし何かあったらなんて考えただけで心配になる。
「クラウスさんは知ってるの?」
「えぇ、クラウスも気付いていたみたい。それで私に守護魔法をかけにきたの。あれくらいの魔力もかわせないなんて、元気になったつもりだったけどまだまだね」
いつの間にかクラウスさんはクレルと話してるんだよねぇ。
油断も隙もないが、クレルを守りたいという気持ちは同じなのだ。同士としてここは許すべきなのか……。
――――私の魔力でクレルも元気にならないかな。
「ねぇクレル、緑の魔力って精霊には心地いいんだよね? クレルに魔力を流したら元気にならないかな?」
ペンダントに入っている時は、緑の魔力の影響を受けて魔力が回復したと言っていたし。どうなんだろう。
「そうね、でもリゼがきついと思うわ。ペンダントに入ってた時は体からじんわり溢れてる魔力で回復してたけど、精霊に直接魔力を渡すのでは魔力の消費量がちがうから」
クレルの体に悪い影響が無いなら問題ない!
私が少しくらい疲れても元気になってくれた方がいい。
「やってみようよ!」
クレルはしばらく休んだら元気になるからいいと断ったが、何度か説得するうちに私が疲れたらすぐ止める事を条件に承諾してくれた。
私はクレルの前に座って集中すると、体の真ん中が暖かくなってきた。
「元気になあれ、元気になあれ」と心の中で唱えるとクレルの方に魔力が流れて行くのが分かった。
「魔力が入ってきたわ」
よし、これであってるんだ。
コツは掴んだので、クレルが早く元気になるように少し多めに集めて魔力を流してみよう。
私の魔力、集まれ〜! 集まれ〜!
胸の辺りに魔力が渦巻いていく、もっと! もっと!
クレルが元気になるくらい!
これでもかと集中して魔力を体中から集めていく。
あ、あれ?
ちょっと集まり過ぎたかも。グルグルと体を巡っている魔力がどんどん膨らんできている。
溢れるーー!!!!
クレルが「えっ! ちょっとリゼ!?」と言うのと同時に魔力がゴッソリ抜る感じがして、クレルは緑の光に包まれてしまった。
慌てて魔力を流すのを止めた。
「クレル!?」
「びっくりしただけ、大丈夫よ」と緑の光の中から聞こえてきた。
良かった、回復させるつもりが余計に疲れたさせたら大変だ。
「信じられない位の魔力が流れてきたわ、おかげですっかり元気よ」
緑の光が少しずつ消えて、クレルがいた場所には、パッチリとした目にスっと通った鼻とさくらんぼ色の唇をした薄い桃色の髪の女性が立っていた。




