料理長ライス
その夜、クラウスさんのお屋敷で食べた料理は初めて見るようなものばかりだった。
形を崩すのが勿体ないくらいに丁寧に作られていた料理たちは、味ももちろん美味しかった。
あんなに大きなお肉を食べたのも初めてだ。
ジュージューと熱々のお肉が湯気をあげていて、ソースはさっぱりしたのとわさびと言う薬味があった。
どちらもクラウスさんの好みの味付けだと言っていたけれど、私は今日からソース派だ。
異国のものだが美味しいからと、わさびを沢山つけてみろと言ったクラウスさんを信じた私がバカだった。ガツーンと鼻の奥に衝撃が走った、クラウスさん許すまじ……。
食事が終わると料理長のライスさんが挨拶に来てくれた。
「お口に合いましたかな?」
「はい! すごく美味しかったです。ご馳走さまです」
ちなみにクレルは部屋で休んでいる。王都は自然が少ないから疲れるみたいだ。クラウスさんが、王都の中心部には大きな公園があってそこには木や花が沢山あると教えてくれた。
公園に行ったらクレルも元気になるかな。
ジェフさんの家に行った帰り、公園に少しだけでも行けないか明日アルヴィンさんに聞いてみようかな。
……アルヴィンさんと公園。
「リゼ、顔がにやけてるぞ。ところで、森の作物を屋敷でも買いたいのだが」
若い娘に、にやけてるなんて言わないでほしい。
「実はクラウス様から、リゼさんの作る野菜や果物が美味しいと聞きましてな。ぜひお願いしたいのです」
クラウスさんを見ると何度も頷いている。
「大丈夫なら詳しくはライスと話してくれ。金額等も全て任せているからよろしく頼む」
森の野菜、本当に気に入ってくれてたんだ。あ、クロードさんを通した方がいいのかな……。
なかなか返事をしない私にクラウスさんが「どうかしたのか?」と聞いてきたので、王都の商会にさくらんぼを卸しているけれど、その他の商品を売る場合も商会を通した方がいいのか考えていたと話した。
「その必要はないだろう。専属契約を結んでいる訳ではないのだろ? それに野菜は私が森に取りに行くからな。間に入られると面倒だ」
え? 毎回クラウスさん取りに来るの?
「クラウスさん、暇なんですか?」
「そんな訳ないだろう、優先順位の問題だ」
何の優先順位かよく分からないが、たぶんクレル目当てだろう。確かに専属契約ではない。クロードさんを通さなくていいのなら、問題はないので取りに来るなら別にそれでもいい。
「では、どのお野菜にしますか? 注文があれば応えられると思います」
その後ライスさんと話をして、季節の野菜とフルーツを一度試食して決めたいと言う事になった。
試食の野菜たちは、クラウスさんが私たちを森に送った時に持って帰るようだ。




