明日の予定
しばらくするとクラウスさんが私に「ありがとう」とお礼を言った。
少し吹っ切れたようなクラウスさんの様子に、アルヴィンさんが一瞬ホッとした表情を見せた。心配してるんだろうな。
クラウスさんが、おばあちゃんの事ずっと探してたって言ってたからその姿を近くで見ていたのかもしれない。
「そろそろ貴族がリゼさんに接触しにくるかもしれません。その前にクラウス様の屋敷に移動しましょう」
アルヴィンさんの言葉にクラウスさんが頷くと転移魔法でお屋敷に戻ってきた。
屋敷に着くとクレルがペンダントから出てきた。
相変わらず、出て来てすぐに体を伸ばしている。本当にペンダントの中は広いんだろうか……。
「リゼのお祖母様は元魔術師だったのね。どうりで心地良かったはずだわ」
――――それでも、いくら回路が絶たれたからといって全く魔力を感じなかったのは不思議だわ。魔術師長ほどになる力があったのならば、僅かでも必ず魔力の痕跡は体に残っていたはず。ペンダントに入って近くにいたのに私にも全くわからなかったわ。
なぜかしら……。
ペンダントの中で話を聞いていたクレルが「自属性以外の魔術を使うなんて、あなたの事がよっぽど大事だったのね」とクラウスさんに言っているのは、クレルなりの励ましなんだろう。
少し驚いた後クラウスさんは、小さく頷いた。
「すまない、みんなに気を使わせてしまったな。今夜はゆっくりしてくれ。リゼは王都に会いたい人がいるのだろう? 明日は1日アルヴィンが君に付くから、会ってくるといい。アル、明日リゼを迎えに来てくれ」
やった! ジェフさん達に会える!!
「あ、アルヴィンさん忙しいんじゃないですか? 住所もわかってるので1人でも大丈夫ですよ。それにクラウスさんのお屋敷に泊まるのは申し訳ないです」
「忙しい仕事は、クラウス様にお願いしますので気になさらないで下さい。それにリゼさんをお守りすると約束したでしょう?」
黒い瞳に見つめられ、サラリとお守りしますと言われた私の心臓は一気にバクついた。
なんと言っても、アルヴィンさんもクラウスさんに劣らずイケメンなのだ。
イケメン耐性どころか、こんな風に言える男の人に免疫も面識も無さすぎて返事も出来ずうつむいてしまった。
村にいたのは、女の人には偉そうにする人たちばっかりだったし。
クラウスさんが「ふーん」と言いながらニヤニヤしているのが横目で見えた。……なんか悔しい。
「そう言うことだ、明日はアルヴィンに任せろ。それと屋敷じゃなくどこに泊まるつもりだ? 王都で君たちだけにするつもりはない、ゆっくりしていってくれ」
お言葉に甘えていいのか考えていると、クレルが「もう疲れたし、そうしましょう」と言ったのでクラウスさんの屋敷に泊まる事になった。
アルヴィンさんは、今日の私の保護についての書類を正式に提出するため一度宮廷に戻るようだ。
「では明日」と言うアルヴィンさんを、まだまっすぐ見る事が出来ず「はい」と小さく返事だけした。




