クラウスのローブ
クラウスさんがいつもの黒ではなく、紺色に金の糸で裾に刺繍してあるローブを身に纏う。金色なのに派手じゃなく上品な刺繍だ。
「いつものローブじゃないんですね」
「あぁ、宮廷魔術師長としての正装だ」
宮廷魔術師……長??
「え、クラウスさんが宮廷魔術師長なんですか??」
「森で言っただろ?」
えー、そうだったかな?
宮廷魔術師とは聞いたような気がするけど記憶にない。
魔術師長って、フォッフォッフォッとか言って髭を撫でてそうなお爺ちゃんを想像してた。
クラウスさん、実は凄い人だったんだ。「覚えてないです」と言うと呆れた様に「さっさと行くぞ」と言って背を向けた。
あれ?
「クラウスさんのローブ、背中にも刺繍があるんですね。守護の魔法陣ですか?」
よく見ないとわからないが隠れたオシャレと言うやつだろうか。守護の陣みたいだし危険な仕事とかあるのかな。その瞬間、クラウスさんがバッと振り返って私を見た。
「背中の刺繍が見えるのか!? なぜ守護の魔方陣だとわかった?」
「クラウス様、謁見の時間です。ローブの事は後にしましょう」
「……あぁ、そうだな。後で詳しく聞かせてもらおう」
び、びっくりした。
クラウスさんには申し訳ないが、昔よく祖母に読んでもらっていた本に載っていた、それだけなので詳しく話せるほどの事はなさそうだ。
気になって何度も私の方を見るクラウスさんをアルヴィンさんが促し、私たちは謁見の間に向かった。
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「き、緊張したぁぁぁぁ」
クラウスさんの執務室へ戻ると近くにあったソファーに倒れ込んだ。
「お疲れ様です、リゼさん上出来です」
アルヴィンさんが褒めてくれたーー!謁見は無事終わった。アルヴィンさんが色々と裏で動いていたらしく、貴族の大きな反対もなく保護はあっさりと決まった。
ただクラウスさんの言う通り保護を受けて良かったと思えるほどに、一部の貴族からの好奇の視線は強く感じた。あの上から下まで舐めるように見る視線が気持ち悪くてドレスじゃなくローブで良かったと心底思った。
精霊の存在は陛下と一部の上級貴族以外には秘密になった。
今現在、平穏に暮らしている精霊の存在を再び表に出す必要はないとクラウスさんが陛下を説得したそうだ。どうりで今日はクレルが静かだと思った。
私が知らない間にクラウスさんとクレルで、目立たずペンダントとからも出ないようにと決めていたらしい。
くっ……いつの間に2人で!
「リゼ、ローブについて聞きたい。魔方陣の刺繍が見えたのが魔力の多さだとすればまだ理解はできる。だが、なぜあれが守護陣だとわかった?」




