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はじめてのお風呂

 メアリアさんに案内されお風呂についた。


 お風呂(ここ)に来るまでの廊下も凄かったが、お風呂はまた壮観だ。

 白を基調としているが壁に沿うように緑が多く置かれていた。窓からは太陽の光が差し込み、中央にある浴槽のお湯に反射してキラキラと輝いている。


「素敵ですね。まるで森の中にいるみたい」


「奥様のご趣味です。森の中にある泉をモチーフに作られたと聞いております。木々も特別な加工をしてますので枯れることもないのですよ」


 えっ! クラウスさん結婚していたのか……。

 年も30くらいに見えるし、別におかしい事は無いけれど自由人なイメージが強すぎてどこか意外におもえた。


「あの、奥様にご挨拶せずに使って大丈夫ですか?」


 クラウスさんに女心がわかるとは思えない。女性(わたし)を脇に抱えて転移するような人だ。こだわって作ったお風呂に知らない平民の娘が入るのだ、気にならないはずがない。


「大丈夫でございます。クラウス様の指示でもありますし、奥様も旦那様もこのお屋敷にはいらっしゃいませんので」


 お屋敷にはいない? 奥様も()()()も??


「クラウスさんの奥様では?」


「いいえ、クラウス様のお母様でございます。クラウス様はまだ独身でいらっしゃいますので。では、時間もありませんので湯浴みいたしましょう」


 やはり独身だったかなどと、失礼な事を考えた罰か初めてのお風呂は波乱万丈だった。




「なんだそんな疲れた顔をして、風呂は気に入らなかったのか?」


 2時間後、疲れ果てた私を見てクラウスさんが聞いてきた。お風呂は毎日でも入りたいくらいに素晴らしかったし気持ち良かった。


 問題はメアリアさんだ。


 王城へ上がるという事で、すみからすみまで洗われたのだ。自分で出来るから大丈夫だと言っても、仕事ですからと全く取り合ってくれず恥ずかしくて倒れそうだった。


 その後、ドレスを着る事になったのだがクラウスさんが謁見用に子どものドレス用意するように伝えていたらしく入るドレスが無かったのだ。


 何才くらいの子どもなのか確認しようにも、クラウスさんが忙しくこの2日間全く連絡が取れなかったので、準備をするメアリアさんはとにかく大変だったようだ。

 仕方なく5〜12才までのサイズのドレスを用意していたのに連れて来たのはもうすぐ18才になる私だ。


 結局、アメリアさんが用意したドレスは使えないので、急いで王都の仕立て屋を呼んで店にある限りの一級品を持って来てもらった。

 その中からなんとかドレスは決まったが、これでは陛下に会うには相応しくないとメアリアさんがクラウスさんに静かに怒りをぶつけていた。


 アメリアさんがダメだと言ったドレスも、私にしたら一生見ることもできないような素敵なものだ。

 これが陛下に会うために着るドレスでなければウキウキだったんだけどなぁ。

 謁見なんて本当に大丈夫かな……。陛下にお会いするなんて、恐れ多くて今からでも森に帰りたい。



 アメリアさんのただならぬ気配に気付いたクラウスさんは、すぐ部下に連絡し宮廷魔術師のローブを届けさせた。それを見て、やっとアメリアさんは納得したようだった。


 仕立て屋の主人も、陛下との謁見に着るようなドレスは何ヶ月も前から用意するものなので店には置いていないと申し訳なさそうに謝っていた。

 なので、私はドレスの上にクラウスさんから受け取った緑色のローブを着ている。


 ローブでドレスは見えないから、買わなくてもいいんじゃないかと言ったらメアリアさんに笑顔で叱られた。   


 この緑色のローブは、宮廷魔術師が謁見や式典などに着用するものらしい。

 ドレスも素敵だったけど私はローブ(こっち)の方が嬉しい。魔法使いに憧れる身としては夢のようだ。


 それにしても、クラウスさんの子どもの基準がわからない。




 ようやく準備が終わったころ部屋にノックの音が響いた。

 扉が開いて部屋に入って来たのは、黒い髪を後ろにながし黒縁メガネをかけた私以上に疲れた顔をした男の人だった。

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