いざ王都へ
何者かと聞かれても困る。
精霊たちが来てくれるのは、私の力ではないのだ。
クレルのお願いでなければ実現しなかった事だ。
そもそも、私はただの森に住むただの娘なのだ。
「クラウスさん、私は何もしてないですよ。すごいのはクレルです。ところでこれからどうするんですか? 王都での予定とか全然聞いてないんですけど」
クラウスさんは、全く納得いってない様子でこれからの予定を話してくれた。
「まず今から王都の私の屋敷に行く。そこで私の部下に会ってもらいたい。その後君の準備を終わらせたら王城に向かう」
私の準備に……王城?? まさか……。
「準備ってなんですか? 私も王城に行くんですか?」
「今日一番の驚きだな。君は私の話を聞いていたのか? 陛下と貴族の承認を得るんだ、勿論君にもその場に来てもらう」
「いやいやいや! 聞きましたけど聞いてませんよ」
王都に行って保護を求める話は聞いたけど、契約書か何かにサインする位であとはクラウスさんが話をしてくれるのだと思っていた。
平民の私が貴族やまして陛下の前に出るなんて……。
無理! 無理です!!
「何を言っているのか全く分からないが、決定事項だ。陛下には事前に話をして保護の了承はすでにもらっている。上位貴族に向けてのデモンストレーションだと思ってくれ。それに君たちの身の安全の為にも必要だぞ。では準備が出来ているなら出発するが大丈夫か?」
なかば放心している私を脇に抱えると、足湯を楽しんでいたクレルを呼んで私が準備していた荷物をテキパキと集め始めた。
さっきとは別人のような完璧な挨拶を精霊たちにすませると、クラウスさんは転移魔法を使った。
「クラウスさん、最初はクラウスさんの家に行くと言ってませんでしたっけ?」
「まぎれもなく私の家だ」
豪華な屋敷の一室に着くとクラウスさんは私をささっと離し、部屋にいた若い女性に湯浴みをさせるようにと指示を出した。
「1時間ほどしたら戻る」と言って部屋を出て行ってしまった。
準備と言ってもなにをしたらいいのかわからない。クレルも今はペンダントの中に入ったままだ。
「はじめまして、メアリアと申します。本日リゼ様のお世話をさせていただきます。よろしくお願いします」
ブラウンの髪を後ろで結んでピシッと背筋を伸ばしたメアリアさんが挨拶をしてくれた。
「よろしくお願いします。あの、様はなくて大丈夫です。私、その平民ですから」
リゼ様なんて恥ずかしくてどんな顔して聞いていいかわからない。メアリアさんは少し迷ったあとに「では失礼してリゼさんとお呼びします」と言ってくれたので助かった。




