魔法書とおまけの種
「あの入門書の方下さい」
「はーい、ありがとうございます。金貨一枚なります」
たっっっか!!
え、高っ!!!
金貨一枚なんて見た事も無い。か、買えない。
財布を出す手を止めて店員さんの顔をゆっくり見る。
「もしかしてお客さん、魔法書の値段知りませんでした? 」
「……はい」
「じゃあびっくりしたでしょ? 高い上に魔法は適性ないと使えませんからね。なかなか売れないんで置いてる店も少ないんですよ。魔術師っぽくなかったですもんね、お姉さん」
わははは、と明るく話す店員さんと反対に気分は下がっていく。
楽しみにしてたのにな……。
「そうだ魔法書じゃないけど、魔力に関係する本ならもう少し安くでありますよ」
魔力に関係する本ってなんだと思いながらも興味はあるので見せてもらう。
「ポーションや薬の作り方に薬草や毒草についての本です。魔力が無いと質の良いポーションなんかは作れないので、この辺りの本も中々売れないんですよね。だいぶ値下げしたんですけど。ちなみに銀貨2枚になります」
銀貨2枚か高いなぁ。1ヶ月の生活費……けど欲しい。
無駄遣いもしてなかったし節約したら買えない事も無い、正直魔法書よりこの本の方が欲しい。
ポーションは作れなくても、薬草にも興味ある。畑で作りたいな、花壇の横にスペースも余ってる。
魔法の本は高いかと思って多めに持って来てたからギリギリ足りる。
「買います!」
「ありがとうございまーす! 確かに銀貨2枚ですね。あ、これおまけです」
本と一緒に古びた小さな袋をもらった。
「その本と一緒にあったんですよね。何かの種だとは思うんですけどねー。なんせ祖父の代からの売れ残りでして」
「え、それなら高価なものなんじゃないんですか?」
本の値段を考えると十分あり得る、さすがにそんなのはもらえない。
「あ〜おじいさんも、おまけって言ってましたから付属品なんだと思います。だから気にしないで下さい。花の種だと思うんですけどねー、それに芽がでるかは分からないです。長い事ここにあったので」
それなら遠慮なくいただきます!
あ、そうだバンさんに持ってきて渡し忘れたお土産持って帰るのもなんだし種のお礼に渡そう。
「あの、これ良かったらどうぞ。ジャムとトマトソースなんですが。自家製なんでお口に合えばいいですけど」
「わー! おいしそー!! ありがとうございます。ジャム大好きなんです。私、ミルキーっていいます! 是非また来て下さいね!」
ジャムの瓶に頬ずりしながらお礼を言うミルキーさんを見て、渡して良かったと思いながら森へ帰った。




