邂逅
家を出てのたのた歩きながら、あらためてウサギの長所についてあげていく。
(ウサギは耳がいいのは周知の事実だけど、鼻が犬の次くらいにいいってのはあんまり知られていない気がするなぁ・・・、あと味覚も人間よりも優れてるって言うしな)
ウサギの嗅覚は犬の次に優れているといわれ、一説には人間の10倍ほどはあるといわれている。そのほかにも味覚は味蕾細胞(味を感じる細胞)が人間は約1万ほどのところ、ウサギは1万7000ほどであり、8000種類ほどの味を感じ取れるという。
(あとは・・・なんかの本に出てきてたな、ウサギは骨が脆い代わりに、筋肉がすごいんだって・・・)
(良し、取り入れる要素はこのくらいでいいか・・・・・、でもそう考えると)と頭上の白い毛玉をちらりと見やる。
(ウサギって色々できるんだな・・・)「・・・・・・・!」フンス!
と、どこか誇らしげなウサギを頭に乗せながら裏山へ行く道をぶらぶら歩いてると、微かに何かのうめき声が聞こえる。
「うん?なんだこの声は?」「・・・・・・・・?」とお互いに耳をぴくぴくさせながら声の下方向へと足を向け、走り始める。
声の主との距離はそう遠く離れていないらしく、子供の足でもすぐにたどり着けた。
そしてそこにいたものは・・・・・・・・
「モ・・・・モグ~」「モグラだ・・・」「・・・・・・・・・・」(汗)
体長15センチほどの迷彩模様の死にかけのモグラが這いずっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」「モグ~・・・・」
何か考えがあるのか?それともただの気まぐれか?優人は両の手に力を込め始める。
そして勢いよく両の掌を名も知らぬ死にかけたモグラへと突き出して・・・・・・・
トリャーーーーー! モグー!?
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「ただいまー」「はーいおかえりー、またゆうは裏山へ行ってきたの?まったく好きねぇ~、ちゃんと帰ったら手を洗うのよ~」
「あーい」「・・・・・モグー!」
優人の返事から少し間をおいてから返事が返ってきて母は「うん?」となった。何か変な声が聞こえてきた気がしたからだ。変な予感がして台所から顔を出し優人を上から下まで眺めてみる、と腹部あたりに迷彩模様のものがこびりついているではないか。
よく観察するとそれはもぞもぞと動いていて・・・・・・・
「ギャーーーーーーー!優人!おなかのソレ!何!?」と絶叫しながら聞いてくる母と対照的なヌボーっとした表情で返答した。
「使い魔、名はモグドンじゃ」「またですか!もうですか!」
と父が帰ってくるその時までこの騒ぎは続いた。
「モグー!」「・・・・・・・・・・」(汗)二匹の獣は離れてこの騒ぎを主人と似たようなヌボーっとした表情で眺めていた。