第1話 プロローグ
初作品です。
試験的な部分を多く含みます。
黒歴史にならないように書き上げます。
いずれ文章を再構成しつつ良きものに転生させていきます。
なんだここ、どうなってる…?
薄暗い空間。
石畳の上に描かれた模様。
恐らく俺がいるのは魔法陣の中心。
そして俺を取り囲む、謎の集団。
彼らはみな漆黒のローブで身を包み、頭まですっぽりと覆われているため表情を伺い知ることはできない。
拉致でもされたか?
生贄にでも選ばれたのか?
俺が彼らに抱いたイメージはまさしく邪教のそれだった。
徐々に頭が働いてくると、俺は濃密な何かが体内に侵入してくる感覚に気づいた。
「うっ…」
視界が歪む。
「ぅぼぁぇ…」
それと同時に、三半規管が無茶苦茶に揺さぶられたような感覚からバシャバシャと吐瀉物が溢れ、俺は倒れ込んでしまった。
倒れた俺の視線の先には、よく知った顔が三つ。
よかった。
状況は分からないが、どうやら俺一人じゃないらしい。
歪む視界で分かりづらいが、三人とも青い顔をして下を向き、膝をついて辛そうな顔をしている。
物音が聞こえ、そちらに目を向ける。
ローブの集団を割って、その間を歩いて誰かが近づいてくる。
「───、───」
煌びやかなドレスの女性と、ガタイのいい男性だ。
女性が言葉を発しているが、聞き覚えのない言語で俺には全く理解ができない。
なんだ?
何を言っている?
どうやってここに来た?
俺たちは確か、さっきまでサークルの部室で──
俺の名前は、黒川ハジメ。
自分のことをフツメンだと信じてる、東京の大学に通う20歳の大学二年生だ。
シティボーイを夢見て大阪から東京にやってきたはいいが、結局彼女もできないまま過ごしている、所謂お前らの一員だ。
今日も退屈な講義を聞き流しながらスマホで適当に時間潰しのネタでも探していると、最近よく見る記事が目にとまる。
『連続失踪事件』
近年、日本の各地で起こり始めたこの事件。
複数の人間が突如姿を消している。
生活感を残したまま人間だけがいなくなるということで警察による捜査が続けられるも、現状何の手がかりも得られていない。
分かっているのは人間がこつ然と姿を消す、この一点の事実だけだ。
一部ネットの掲示板では『異世界転移キター』だの言われて盛り上がっており、俺も異世界に行って勇者になってハーレムを築く妄想などをして日々を過ごしている。
異世界モノのラノベも流行っているし、皆そう思うのも当然か。
なんやかんやスマホをいじっていると講義終了の合図が聞こえ、講義を聴いていた生徒たちはゾロゾロと帰り仕度を始める。
「クロ、もう今日とってる講義ないでしょ?
部室行こうよ」
声の方に顔を向けると、いつもの見飽きたメガネ野郎がすっかり帰り支度を終えてこっちを見ている。
こいつの名前は青山コウタ。
自分では陰キャラとか言ってるが、メガネを外したら普通に童顔だし、何より彼女もいる。
くそが。
「すぐ用意するから待ってくれ」
俺が学校から電気を拝借しているスマホの充電コードなどを外していると、後ろからも声がかかる。
「俺らも今日は講義ないから、一緒にいこうぜ」
こいつの名前は赤井ダイチ。
お調子者のイケメン。
そんでもって俺たちが所属するオカルト研究サークルの部長。
なんでイケメンがオカルト研究サークルなんか入ってんだよって話。
俺みたいなのがますます目立たなくなっちゃうだろ。
「私も用意するから待ってね」
そしてその隣にいるのが、同じくサークルの部員で赤井ダイチの彼女、白石メグミ。
ちょっと気が強い系の美人。
委員長気質だな。
お調子者と委員長、お似合いのカップルだ。
はぁ……こいつらといると惨めになるわ。
俺たち4人は同じような趣味を持ってサークルに入り、もう1年ちょっとの仲だ。
俺たちはお互いの苗字の色をもじって、クロ、アオ、アカ、シロって呼び合っている。
準備を終えた俺たちは、今日も文化系の部室が集まる部室棟へ向かう。
活動内容はと言うと、ちょっと前までは部室でそれぞれ好きなことをしていただけだった。
俺だったら、昔からやってるゲームの影響を受けて悪魔召喚について調べたり、ノート何冊にも渡って色んな魔法陣描いてみたりして。
気持ちわりーよな。
一般の人がみたらドン引きするわ。
厨二病が抜けきってないんだな、多分。
しかし最近は巷を賑わす失踪事件について文献を調べたり、実際にその事件現場に行ってみたりと、足並みをそろえて活動しており、やることも多くなってきた。
警察が解決できない事件って言うと、オカルトの定番だからな。
現場に行くって言っても旅行するための口実だ。
多少の聞き込みなんかはやったりはした。
所詮は大学生のお遊びみたいなものだが。
今日もみんなスマホだったり、俺は部室に持ち込んだパソコンを使って失踪事件に関係ありそうなことついて調べていた。
「クロ、何か気になる記事でも見つけた?」
アオが俺とパソコンの間を覗き込むように聞いてくる。
コイツ若干ショタっぽいんだよな。
今までずっと彼女いたことないから、このままだと目覚めそうだわ。
「いや、特に気になるものはないなぁ。
聞いてくるってことは、アオも収穫なしか。
そうポンポンと見つかるわけないわな」
「そうだね。アカはどうなの?」
「こっちも収穫ゼロ。
途中からスマホゲーしてたぜ、すまん。
シロはなんかずっと読んでるけど。シロ?」
じっとスマホの画面を見続けるシロ。
眼球だけが文章を追うように左右に揺れている。
「なんか聞こえてないっぽいね」
「おーいシロ、なんか見つかったのか?」
「ん? あ、ゴメンね。
集中してて聞こえてなかったけど、私に何か聞いてた?」
なんか熱心に読んでたもんな。
「何かいい記事あったのか、って話」
そう言うと、シロは見ていたスマホの画面を向けてきた。
「うん、今見てる怪しげな個人のオカルトサイトにちょっと気になること書いてるよ。
グループラインにURL送るから読んでみて」
男三人のスマホがラインの着信を受けて振動する。
「でも内容長いから、一応私が読んだことまとめて言ってあげてもいいけど。 どうする?」
ドヤ顔で言ってくるシロ。
「頼んでもいい?」
「俺も頼むわ」
読むのが面倒な俺もアオの発言に続く。
アカは発言ないから、スマホゲーやってるんだろうな多分。
「ふふーん、おっけい。
なんでも、失踪事件が多発するのは今に始まったことじゃないんだって。
数百年毎、この記事では約500年毎に同じような連続失踪事件が発生してるって書いてて、ある時を境にパッタリと起こらなくなるらしいよ」
「ある時って?」
「そこまでは書いてなかったけど、日本各地で失踪事件について書かれてる古い文献がいくつもあって、それらに記されている失踪事件の時期がだいたい同じらしいわ。
500年前だと室町時代、1000年前だと平安時代くらいかな。
それくらいだと文献は見つかったらしいんだけど、1500年前ともなると文献も少ないしあまり分からないって書いてあったわ」
「それだと500年周期だってあんまり分からんなぁ」
そうは言った俺だが、何かそれが真実のように感じた。
「仕方ないでしょ、歴史なんてたかが知れてるんだから。 こういう説もあるっていう話よ」
「それで全部なのか?」
唐突に発言するアカ。
聞いてたのか。
スマホゲーしてたんじゃないんかい。
「あと、人がいなくなる直前に眩く金色に光ったって記述もあるわね。
これは私たちが失踪事件現場付近の人に聞き込み捜査したときに聞いた話と同じね。
テレビでも言われてたし」
捜査って言ってるけど、本気で聞いて回ってたのシロくらいだからな。
そういえば、アカはあの時もスマホゲーしてたな。
控えめに言ってもスマホ中毒だろ。
「光ったとか文献に書いてるってことは、関連はありそうだね」
「異世界転移の線がますます濃くなってきたぜ。
ワクワクするな!」
アオとアカはテンションが上がっている。
俺もだが。
「一応文献の引用も書いてあるから、私も信憑性は高いと思うよ。
でも実際に人が居なくなってるから、あまり喜べたものじゃないけど。
家族とか知り合いが消えたら嫌だよ私は」
「まぁそう言うなよ。
あとはどうやって異世界に行くかだな」
「アカ、そんなに異世界に行きたいの?
あるかどうかもわからないのに。
あと、行けたとしても安全な世界じゃなかったら怖いじゃない。 アオとクロもそうなの?」
「そうだね、これは男のロマンというかなんと言うか」
「アオの言った通りだな。一度くらい行ってみたいもんだ」
やっぱり異世界って聞くと冒険心?みたいなものがくすぐられるな。
どうせこのまま過ごしてたら大したことも起こらないまま大学を出て就職して、平凡な人生を送るんだ。
ちょっとくらい夢見たっていいだろう。
「そういうものなのね。私にはちょっと分からないわ」
シロが若干呆れている。
「次の課題は、どこに行けば異世界転移に巻き込まれるかだな。
この機会を逃せば多分500年後だ。
最近の事件と、さっきの文献とかも洗って発生場所の傾向を見極めないとな」
アカがいつになくやる気だ。
さっきの話を事実とした前提で動くんだな。
「まぁいいわ。私も手伝うわよ」
「なんだシロ、さっきまで消極的だっただろ。アカが行くなら行くのか?」
「この4人で一緒に馬鹿なことをやるのが楽しいだけよ。
家族もいるんだし、行けるとしても行くわけないでしょ」
まぁそんなもんか。
「大学を卒業したら今みたいに遊べなくなるんだし、今できることをやろうよ」
アオも楽しそうに言っている。
「そうだな」
そんな感じで色々調べて過ごしていると、そろそろ日も落ち始めていた。
おっとそろそろ時間か。
今日もいつもどおりの日常だったな。
「バイトの時間だから帰るわ」
「そうだね、ボクもそろそろ帰ろうかな」
俺とアオが片付けを始めると、アカが俺たちを指差す。
なんだ急に。
「じゃあ最後に部長命令だ!各自、明日以降の具体的な行動予定を考えてくるように」
アカが今日一番の笑顔で俺たちに言い放った。
「そうね、またやることが増えたわね」
「じゃあ今日は解散だね」
4人はそれぞれ帰り支度を始める。
帰り支度を終えて部室を出ようとアオがドアノブに手をかけようとした時。
突如俺たちの足元に巨大な魔法陣が出現した。
「なんだこれ?」
俺が気づいて声を出す。
「ん? これって何のこと?」
俺の視線を追いかけて3人も足元に視線を落とす。
魔法陣には見たこともない文字がグルグル回っている。
体験したこともない状況に声も出せずにいると、突然魔法陣から手のようなものが伸びはじめ、目の前のアオの身体に絡みつき始めた。
「うわぁ! なっ、なんだコレ、離れない!
それに動けないよ! クロ、助けてよ!」
後ろからも二人の声が聞こえる。
「うぉ! 気持ちわり!」
「なによコレ! 離れなさいよ!」
アカとシロも同様に謎の手に絡みつかれている。
あれ?俺は?
ふとアオに視線を戻すと、さっきまで伸びていた手が顔までたどり着き、口や鼻から侵入している。
それを受けて、アオは白目をむいてアガガガ言いながら痙攣している。
うーわ、グッロ。
後ろからも悲鳴が聞こえるから、多分二人にも同じことが起こってるんだろうな。
さて俺には何も起こっていないが、一体どうしたものか。
これが異世界転移だとしたら、このままだと俺はどうなるんだ?
異常事態にもかかわらず、意外と思考は冷静だった。
コイツらがいたから大学生活も楽しくできたが、コイツらがいなくなったら俺はボッチのオカルト研究サークル部員か。
それは非常にマズイな。
社会的に死んだのと同じだろ。
今起こっている現象を見るに、魔術的な何かだろうし、たとえ殺すならもっとサックリやってるよな。
死なないことを祈ってなんとかついて行きたいな。
そんなことを考えていると、魔法陣が強く光を発し始めた。
「急がないとやべぇ!」
とりあえず近くにいたアオに抱きついて密着すると同時に、部室が金色の光に包まれ──
クロたち4人は、地球から姿を消した。
そんな感じで、俺は今ゲロまみれで転がってる。
ゲロから始まる異世界生活ってか?
笑えねぇなぁ。
俺は意識を手放した。
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